|
1. 逆ピラミッド型マネジメントシステムとは
東京都及び文科省が強力に推進しようとしている「人事管理システム」「新たな学校運営のあり方」は、現在の主任制度にかわり、監督権限を持ち、管理職の補佐機能を持つ「主幹」の設置であり、学校運営組織の見直しである。
主幹制度は決して新しい内容のものではない。「改善の視点」で「学校運営上の問題点」として「教職員間に『横並び意識』」をあげ、監督権限を持ち、管理職の補佐機能を持つ「主幹」を設置する視点はピラミッド型の管理体制そのものである。
しかし、「ピラミッド型」のマネジメントや管理体制は今日、人々のニーズに応じる効率的で有効なシステムではないという考えが最近の経営学に広まっている。ピラミッド型の命令組織の最たるものであるアメリカ陸軍ではピラミッド型組織を解体し、新しい組織を模索している。アメリカの企業においては「フォード社」、日本でも「資生堂」など、行政では「静岡市」などが新しい組織論として、「逆ピラミッド」での組織の見直しを行っている。
従来のピラミッド型組織が機能しなくなった最大の原因は、人々の生活に対するニーズのあり方が変化してきたからではないかと思う。…中略… モノの大量生産、大量消費が求められた。そのために組織は労働の分割と細分化が必要となった。次第に組織の規模が大きくなるにつれて分業間の調整が課題となってきた。そこでその業務を監視し、コントロールする中間管理職、上級管理者が必要となった。こうした流れでピラミッド型組織なる形態が誕生した。簡単に言うと、ピラミッドの頂点が計画し、管理階層を通じて従業員はそれを実行する、つまり経営者と労働者の分離である。この形態は少品種大量生産が求められていた当時にはとても適していた。しかし、現代が近づくにつれ人々の低次欲求が充足されてくると、人々の消費はどんどん多様化し、多品種少量生産が求められるようになってきた。これにより、ピラミッド型の組織では、企画立案をおこなう頂点が底辺から遠いために、市場に近い現場の声が反映されにくく、そのため市場の多様な需要を的確に把握することが困難になるのである。また、情報技術の発達により即時に大量の情報を処理することが可能になり、階層的組織の必然性がなくなったこともピラミッド型組織が機能しなくなった要因の一つであると思う。このようにして新しいタイプの組織が可能になり、変化の激しい現代においては従来のピラミッド型組織と違い、上下間の意思決定のスピードが速い新しいタイプの形態こそが求められているのである。」「情報化社会と人間形成」
この変化は教育分野においても同様で、「画一と受身から自立と創造」「個性と能力の尊重」「個に応じた指導」など生徒・保護者の多様な教育要求に応えることは「市場の多様な需要を的確に把握すること」と同じ現象である。
2.学校に合った学校組織と逆ピラミッド型マネジメントシステムの構築
「生徒・保護者の多様な教育要求に応える」学校づくりは、必要である。しかし、現在の学校組織と運営方法で三つの評価システムを有効に機能させることは難しい。
各学校は、東京都のような主幹制度による管理体制の導入を待つのではなく、三つの評価システムの導入に合わせてそれぞれの学校に独自の校内組織の見直しと学校運営システムを構築する必要がある。
従来の学校組織や学校運営はどの学校も似通った「横並び」のシステムで、特に100校計画で新設校が次々と出来ていくなかで、即戦力としての組織や運営に独自色を盛り込む余裕も有効性もなかった。
100校計画が始まって30年、多様な教育要求に応える学校づくりという新たな課題に向けた学校づくりは、「横並び」のシステムから、地域、保護者、生徒の要請に応じた学校運営を可能にする新たに「システム」を構築する必要がある。それぞれの学校が独自色を盛り込み、生徒一人一人に応じた、きめの細かい教育活動ができる新しいタイプの学校経営が求められている。
「わかる授業」「きめの細かい指導」「考えさせる授業」「興味を引き起こす授業」「個々の生徒に応じた指導」等々の教育活動を可能にするシステムは「横並び」の主幹制度ではなく、生徒や保護者に密着した教員一人一人が同じ学校で課題を共有する教師集団と協力共同して、スピーディに具体的対応策や柔軟な指導計画、教材の開発等を実行する新たなシステムをつくらねばならない。そのためには、逆ピラミッド型のマネジメントシステムと新たな「研修部」の立ち上げが必要である。
3. 逆ピラミッド型経営論で新たな学校組織を構築してみると…
新たな学校組織の視点は、学校の組織の目的と責務を明確にすることから始まる。
@学校は、子どもの教育を受ける権利を保障し、その内容を生徒及び保護者に説明し、学校はその目的を適正に果たしていることを設置者である機関及び主権者に明らかにしなければならない。
A学校はその目的と責務を果たす組織を構築し、最も有効で適切かつ迅速に運営しなければならない。
それでは、学校の目的と責務を果たす学校の組織と運営はどのようなものか。
B子どもの教育を受ける権利を保障し、その内容を生徒及びその保護者に説明する学校組織と運営とは、子どもや保護者と直接接触する教職員が教育要求を適切に把握し、教師集団の協力を得て、有効で迅速な対応と具体的で無理のない適切な指導を行い、その情報が直ちに生徒、保護者に伝えられ、管理職が把握できるようシステム化することである。
そのシステム化とは、その学校にあった教育情報システムを構築することである。
C各学校は情報システム室を設け、情報管理者の指揮の下、すべての学校業務内容を電子情報にし、メインサーバーに集約し、校内Lanを構築して、教職員が作成したすべての情報が所定のフォルダに保存され、情報管理者と教科、学年、校務分掌等の情報担当によって、情報を整理し、校内Lanで常時アクセスできるようにする。また、公表する情報はホームページにのせ、生徒の個人情報は情報担当者の手で、絶対に外部に漏れないセキュリティーフォルダに保存する。
○各教科は教科のフォルダに科目ごとにシラバスを作成し、シラバスの指導項目に従った教材(共有教材、個人教材の区別なく集録)にアクセスできるようにする。シラバスは年度当初ホームページに掲載され、生徒も保護者も常時アクセスでき、教科の生徒の学習計画、学習のポイント、関連分野の教材及びリンク集も掲載して自学自習できるサイトにする。
授業での新たな発想や生徒の反応から授業への問題識や教材の工夫等を、インターネット上での教材や資料の集録など教科メンバーが自発的に教科の資料の充実に努める。
生徒による授業評価の集録結果を分析し、教科指導の問題点と課題を整理し、具体的な解決策やアドバイス(フォルダでの交流で)なども行う。教科での研修についてはその取り組みと研修状況、及びその具体的成果をまとめる。
○学年のフォルダには学年業務を年度ごとに業務分担の実務内容を集録する。また、学校目標の達成のための業務目標とそのプロセスを整理して、生徒、保護者の意見等、職員の反省事項などを集録して記録する。学校評価の調査結果の集約とその分析、課題に対する対応策、具体的手だて、実行内容などを記録。生徒による授業評価では、学年での教科・科目での課題への対応、具体的成果などを集録、生徒、保護者のそれに対する反応などもまとめる。
○校務分掌のフォルダには分掌業務を年度ごとに業務分担の実務内容を集録する。また学校目標の達成のための業務目標とそのプロセスを整理して記録する。学校評価の調査結果の集約とその分析、課題に対する対応策、具体的手だて、実行内容などを記録。
以上述べてきたことは、どの学校でも取り組み方法や集録記録などにおいて違いはあるが基本的取り組みや業務内容には違いはない。それで何が、新たな学校の組織と運営なのか?
ここには、命令系統システムが働いていない。組織とシステムを整備した後、教科担当、科目担当、学年担当、学年業務担当、校務分掌業務担当が担当業務に責任を持って実行し、所定のフォルダに収録記録する。さらに、個々の教職員及び業務担当またはかかわりのある業務担当から提案、具体策、資料提供、アドバイスを関係フォルダに載せ、担当者はそうした内容を参考により良い業務を行う。
学校業務全般を集録するサーバーは学校業務のターミナルであり、業務担当は、サーバーに寄せられた中身を参考により良い担当業務への取り組みを行う。
この組織運営では中間管理職は存在しない。教科、学年、分掌の主任はもしくは情報担当者はサーバーに寄せられた情報を整理整頓して利用しやすいフォルダを作成する。また、業務内容等でホームページに掲載するファイルに再構成し、アップロードする。
校長、教頭は絶えずサーバーに目を通し、業務を点検し、不適切な内容や誤りを指摘し、改善や新たな取り組み、追加の取り組み、アドバイス等必要に応じて、担当者および業務担当全員、あるいは職員会議で指示する。完全な横の組織による運営である。
|