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朝日新聞(2003.3.21)より | |||||
教育基本法改正盛り上がリ欠いた議論
まるでシンポ 「この案でいかがでしょう」。20日の総会で、鳥居会長が答申案について問い、「異議なし」の声があった後、市川昭午臨時委員(国立学校財務センター名誉教授)が手を挙げた。 「答申することに異議はないが、同意はしかねる。改正より改悪だ。 (国を愛する心などの)徳目や道徳律を追加する答申だが、法は人の行為を律するもので、心を律するものでははい」 しかし、答申はそのまま遠山文科相に手渡された。「議論を尽く起ていない。なぜ見直すのか、いくら読んでもはっきりしない」と市川委員は語る。 基本法を議論する基本問題部会は28回を重ねたが、うち5回は出席した委員が過半数に達しはかりた。矢各県から「いつも初回のよう」「同じことの繰り返し」という発言が出た回もあった。 梶田叡一委員(京都ノートルダム女子大学長)は改正を打ち出した答申を「ショック療法になった」と評価しつつ、審議をこう振り返る。 「長時間連続シンポジウム。データに裏付けられた議論を積み上げられなかったのが残念だ」最終答申は「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」という目標を掲げた。遠山文科相が昨年8月末、経済財政諮問会議に出した「人間力戦略ビジョン」の題「新しい時代を切り拓くたくましい日本人の育成」にそっくりだ。 答申に至る議論では、「『たくましい』だけだと経済原理だけが働いている気がする」と委員から意見が出、「心豊かで」という言葉を加えただけでそのまま通った。「結局、かじを取ったのは文科省の事務局」と別の委員は言った。 難題が山積 与党3党は5月の連休明けから幹事長クラスの協議機関で改正案の検討作業に入る。しかし、公明党はなお慎重意見が強い。 協議機関づくりに公明党が応じた3月初め、自民党文教族には「大幅前進」との声もあった。だが、「国を愛する心」などの表現や宗教教育のあり方をめぐって創価学会は慎重姿勢を崩していない。答申前日の19日、神崎公明党代表は「今国会中に急いで結論を出す必要はない」と待ったをかけた。 自民党には4月の統一地方選が終われば公明党も軟化し、早期提案への道筋が開けるとの期待もある。ただ、前国会からの宿題である有事法制や個人情報保護法案が控えている。イラク戦争に絡む支援新法も焦点となる可能性がある。文教関係も、与野党対決法案である、国立大学の法人化法案の成立を優先せざるを得ない。 教育改革国民会議で基本法改正を検討した小渕、森両政権と比べ、首相官邸の熱意はいまひとつだ。小泉首相がどこまでこの問題に意識を集中するかは心もと店い。 「基本法改正で解決できない」 批判や抗議も 中央教育審議会の鳥居泰彦会長は幻日の記者会見で、「答申で21世紀の教育が目指す基本的方向を示したと確信する」との談話を読み上げた。遠山文部科学相は「これを実現することで日本の教育はさらに良くなっていく」と歓迎した。 答申を受け、作家の辻井喬さんら文化人や有識者でつくる「教育と文化を世界に開く会」は、「日本社会や学校教育の現状に様々な問題や課題があるのは事実だが、多くは基本法を変えることで解決や克服ができる性質のものではない」と抗議アピールを出した。 日本弁護士連合会は本林徹会長の声明で「公教育の場で『国を愛する心』を押しつけ、内心の自由を保障する憲法に抵触するおそれがある」などと問題点を指摘し、政府や国会に答申の慎重な取り扱いを求めた。 日本教職員組合(日教組)や全日本教職員組合(全教)も批判した。
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