日経新聞(2003.8.9)より
不登校、28年ぶり減少学校基本調査
昨年度13万1000人 高水準は続く
 二〇〇二年度に三十日以上学校を休み一不登校」とされた小中学生は十三万千人で、前年度を五・四%下回ったことが八日、文部科学省の学校基本調査速報で分かった。マイナスになるのは一九九一年度に現行の調査方式になってから初めて。調査方式が異なる時代も含めると七五年度以来増え続けており、減ったのは二十八年ぶり。同省はスクールカウンセラーの拡充などが原因としているが、学校現場などでは「増加傾向に歯止めがかかったとみるのは時期尚早」との声も多い。
 調査速報によると、不登校の小学生は二万六千人と、前年度より六百人、二・四%少なかった。中学生は十万五千人で、七千人、六・一%減った。減少は小学校で十九年ぶり、中学で二十八年ぶり。小中合計は二十八年ぶり。
 全児童生徒に占める不登校児の割合は、中学校は三十七人に一人(前年度は三十六人に一人)で、依然としてクラスに一人はいる計算。小学校は二百八十人に一人(同二百七十五人に一人)。
 不登校の子供のうち、適応指導教室や児童相談所、カウンセラーらに相談しなかった子は四〇・四%に上り、支援体制の整備が遅れていることを示した。
 〇二年度までの一年間で、スクールカウンセラーが週に少なくとも一日は派遣される公立小中高校は約二千百校増えて約六千五百校(四九・二%増)となり、重点配置している中学校では全体の三割強に派遣されている。同省は「不登校は依然高水準にあり、さらにきめ細かな対応が必要」とし、〇五年度までに約一万校ある全中学校への派遣を目指している。
識者の見方
土壌むしろ拡大改善判断は早計
教育評論家の尾木直樹氏

 スクールカウンセラーの拡充などが奏功している可能性はあるとは言え、学力向上策や完全学校週五日制の導入で過密になった授業スケジュールなどで子供へのプレッシャーは強まっており、不登校の子供を生み出す土壌はむしろ広がっている。統計上の数字が減少したからといって不登校問題が改善していると判断するのは早計。少なくとももう一年は傾向を見極める必要がある。

LD増加など質的には変化
不登校情報センター(東京)の松田武己代表
 .学校現場ではフリースクールに通う子供も出席扱いにするケースがあり、不登校数の細かい増減の議論はあまり意味がない。今の学校教育に合わない子供の数は大体この水準と思われ、しばらくこの程度で推移するのではないか。ただ学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、対人恐怖感の強い子が相対的に増えるなど、質的には変化してきている。
今春大卒の22%が進学も就職もせず過去最多に並ぶ
 文部科学省の学校基本調査速報では、今春の大学(学部)卒業生五十四万五千人のうち、進学も就職もしなかった人の割合が前年より○・八ポイント上昇し、二二・五%と過去最多だった二〇〇〇年度に並んだことも分かった。アルバイトや契約社員など一年未満の一時的な仕事に就いた人の割合も同○・四ポイント上昇し、卒業生全体の四・六%と過去最多となった。
 同省は「若者に職業観や勤労観が育っておらず、『必ずしも働かなくてもよい』という考えが保護者も含めて浸透しているのではないか」(調査企画課)とみている。
 今春の大学(学部)卒業生は前年より三千人少ない五十四万五千人。厳しい雇用環境を反映して就職率は五五・○%と前年より一・九ポイント低下し、過去最低を記録した。

改善?横ばい?見方割れる
「歯止めかかってきた」「弱くもろい子増える」
 不登校の子供は数字のうえでは減少したことになるが、問題は改善の方向にあるのか、実態は変わらないのかだ。「歯止めがかかってきた」との指摘がある一方、「もっと深刻化している」との見方もあり、関係者の見方は分かれている。
 「歯止めがかかっている実感はある」と話すのは東京都内の市立中学校の女性校長。以前は不登校の生徒が例年二十人以上いたため、五年前に東京都教育委員会に週に二日間、カウンセラーを派遣してもらうよう要請。今では不登校の生徒はゼロになった。
 この校長は「子供は『自分のことをしっかりと見てくれる人がいる』と感じれば、学校に居場所を見つけられる」と評価する。
 都内でフリースクールを運営する男性も「減少傾向にある」とみる。自治体が不登校の子供を受け入れる「適応指導教室」を増やしたり、フリースクールヘの登校を校長裁量で学習指導要録上の出席扱いできるなどの措置を評価。「受け皿が増えれば子供や保護者は安心し立ち直りのきっかけとなる」とする。
 一方、「減っている実感はない」と話すのは、関西で子供の相談などに応じている自治体の女性非常勤職員。「発達障害など医師との連携が必要なケースが増えたり、友人のちょっとした一言で登校できなくなるなど、弱くてもろい子供が増加。不登校の背景や要因も変質し、深刻化している」と分析する。
 福岡市の市立中学校の男性教頭は一学校や受け皿施設の努力は無駄ではない」としながらも、「不登校になる要因は千差万別。減っている実感は乏しく、横ばいという印象が強い」と話した。



毎日新聞(2003.8.9)より
不登校 初の減少
 対策が効果 なお総数13万人 学校基本調査
  
 昨年度に不登校で年間30日以上学校を休んだ小中学生は、01年度より約7500人、5・4%減って約13万1000人で、9!年度に同じ形式で調査を始めて以来、初めて減少したことが8日、文部科学省の「学校基本調査速報」で分かった。同省は学校へのスクールカウンセラー配置などの対策が一定の効果を上げたと分析しているものの、依然、91年度の2倍の水準で、「憂慮すべき状態」と受け止めている。
(社会面に関連記事)
 同省は66年度から「学校嫌い」で年間50日以上欠席した児童生徒の調査を始めた。この時期を含めると、前年に比べ減少したのは27年ぶり。
 調査速報によると、昨年度の不登校は13万1211人。うち小学生は2万5869人(前年度比642人減)、中学生は10万5342人(同6869人減)。都道府県別にみると、東京都や大阪府、栃木県など39都道府県で減少した。不登校の児童生徒の割合は、中学生は37人に1人で、ほぼ「クラスに1人いる状態は変わっていない。小学生は280人に1人。
 同時に実施した「生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、不登校の直接のきっかけは、極度の不安や緊張、無気力など「本人の問題」が3割で最も多く、「友人関係」が2割、「親子関係」が1割となっている。
 不登校が続く理由は、さまざまな要因があって特定できない「複合」と、漠然とした不安などの「情緒的混乱」がいずれも4分の一を超えた。「無気力」は2割、「あそび・非行一は1割。「あそび・非行」は小学生ではO・9%だが、中学生になると12・2%に増えている。【横井信洋】

今春就職率、過去最低に
高卒16.6%
大卒55.0%
進学に流れる傾向
 今春の高校卒業者の就職率が過去最低の16・6%(前年度比O・5ポイント減)、大学新卒者の就職率も過去最低の55・O%(同1・9ポイント減)だったことが8日、文部科学省が発表した「学校基本調査速報」で分かった。大学、短大、専修学校専門課程などへの進学率は6割を超えており、高校生は就職難と、少子化で入りやすい大学が増えたことを背景に、「就職できないから進学する」という傾向がうかがえ
る。
 高卒者の大学、短大への進学率は44・6%(同O・2ポイント減)、専修学校専門課程への進学率は過去最高の18・9%(O・9ポイント増)だった。男女別進学率をみると女子が男子より4〜6ポイント高く、就職率は逆に男子が女子を4ポイント上回っている。
「進学も就職もしない」のは10・3%(同0・2ポイント減)。内訳は家事手伝いをはじめ、海外の学校への入学や職業能力開発施設への入所など。東京都立高校の教諭は「進学が多いのは願書を出せばOKのような大学が増えてきたからだが、目的を持って進学しているわけではない。フリーターになるのを4年遅らせているだけのような気がする」と話す。
 また大卒後、進学も就職もしないのは22・5%(同O・8ポイント増)とほぼ5人に1人。大学院進学者は過去最高の11・4%(同O・5ポイント増)だった。【横井信洋】

どうするさぼる子
不登校予備軍むしろ増加か
ある校長「粘り気がなくて、気力もない。家庭の教育力が落ちている」
 「さぼる子供たち」をどうやって学校へ行かせるか。文部科学省が8日に発表したデータでは、不登校の小中学生は昨年度、11年ぶりにわずかに減ったが、教師は困難な現実に直面している。「無気力などによるさぼりの予備軍はむしろ増えている」という声もある。憂休みも不登校の児童・生徒へのはたらきかけを続ける埼玉県川口市の市立小学校長に同行した。
 校長の小学校を卒業した中1の男子生徒は5月の連休前後から、これといった理由もなく学校を休みがちだ。小学校の時も不登校だった。「元気か」。7日午後、校長は玄関先で生徒と握手し、居間に上がり込んだ。
 母親が「この子はものぐさだから。前は殴ってでも行かせようとしたけど、前の先生から『そっとしておいたほうがいい』と言われ、うるさく言わなかった」と話した。
「1学期は登校しても1日1、2時間だったから、2学期は頑張って半日にしょうね」と母親が水を向けても、生徒はうつむいてうなずくだけだ。校長が「校長先先が迎えに来たらいいのかな」と語りかけると「大丈夫(来なくていい)」と小さな声で答えた。
 校長は話者に「彼は、怠けなんだ。粘り気がない。エネルギーがないから、このままならフリーターにもなれないかもしれない」と言った。
 1学期に休みがちだった小竿5年と3年の姉妹のアパートにも向かった。一家は不在だったが、妹は以前、校長に「お母さんは遊びに行って家にいない」と話したことがあるという。校長は「親が子供を顧みない家庭が増えている。こういう子は、働きかけると学校に来るが、しばらくするとまた来なくなる」と嘆く。
 千葉市内で生徒の1割近くが不登校だった市立中の前校長も「無気力が原因の不登校が減っている実感はない」と言う。「家庭の教育力が落ちているから、さぼりや非行による不登校の予備軍は増える」とみている。
【横井信洋】

教員OB出張も
 各地で不登校対策が進んでいる。
◆埼玉県志木市
 ボランティアの教員OBらが不登校の小中学住宅に出向いて授業する「ホームスタディー制度」を昨年度から始めた。同市教委によると、3月末時点の同市の不登校児童・生徒は79人。「学習意欲がある」条件をクリアした児童・生徒26人について、週2回程度の在宅授業を実施し、3人が学校に復帰し、2人が適応指導教室など中間施設に足を運ぶようになった。
◆栃木県
 今回、全国で最も高い減少率を示した栃木県。鹿沼市では、02年度から市立中3校に「適応援助室」を設け、一般クラスとは別の時間割で授業をしている。登校できても教室には行けない生徒のための措置だ。市立西中の教頭は「教室への復帰は段階的に進めている」と話す。