神奈川県高等学校教育会館

『ビオトープ「農」をとりいれた自然観察・実習の教材化』


自然観察研究
 備前 貴俊(商工高校)
 
 子供のとき、どんな遊びをしたか。この問いは世代間で顕著な差が見られることに違いない。さらにそれが自然と触れ合うという尺度に注目すれば、その差はもっと明らかになる。40代後半の私はと言えば、都市部で少年期を過ごしたが、それでも、夏はカエルやザリガニ採りに興じていた。地域に林や池があり子供たちの自然の遊び場がいろいろ残っていたのだ。60年代の高度経済成長は都市部の自然を、70年代の日本列島改造は地方都市の自然を廃棄してきたと言える。40年前かろうじてあった「里山」の痕跡がほとんど失われた今日、公園の整備や緑化事業で、多額の税金を投入して、自然を回復していこうとするのだが。
 
 「ビオトープ=biotope」と言う言葉はドイツ語の" bio"生物と" tope"空間を示す造語である。環境問題がクローズアップされて久しいが、公園から学校、都会のビルの屋上にまでビオトープが作られるようになった。ドイツで生まれたビオトープは自然の復元がテーマであった。人工的にたとえ小規模であってもそこに動物や植物の生息できる空間があり、人はそれと接する中で失われた自然との共生を感じる効果を期待していると考えられる。

 商工高校では6年前、バレーコート建設予定地とされた遊休地を利用して、B教諭が生物の授業で植物の栽培を取り入れた。その後、学校設定科目に理科総合を設け、2002年から遊休地を「理科実習農場」とし、理科の職員全員で教育活動に利用してきた。生徒とともに「荒地を農地に変える。土を作る。蒔く。育てる。収穫する。食べる。」という作業をするうちに、2003年からビオトープの作成に着手した。少ない予算の中でどう作るか、水源をどうするか(水道水の使用は後に不可)が最大の問題であった。2004年に一応完成し、6月メダカを投入、小さな生態系への始めての動物の出現である。

 今研究事業ではまず、1.水道水を使えない状況の中ですべて雨水のみで維持するための研究とその整備。2.無農薬・有機農法で理科実習農場を維持するための研究、条件整備。さらに3.は自然と接する教育実習の意義についての考察。4.商工実習農場を紹介するアルバムの作成。をおこなった。
1についてはテニスコートにふる雨水を利用し、試行錯誤の末、約30メーターの中間地点に手製の受水槽を作成した。2については完全無農薬での農業を実践するため、頻繁に雑草を除去し、また、化学肥料を使わず、自家製の腐葉土を用いたり、地力を回復させるため、休耕地・輪作を取り入れた。さらに、実習農園の周囲の杉の木を伐採、クヌギ、ミズナラの植林で腐葉土や堆肥を自前で入手できるような、ビオトープから里山の復元(「トトロの森計画」と呼んでいる。)を考案し、実践した。3点目は自然と接するとなぜ人はなごむのか。森林浴の効果やアメリカではすでに犯罪を犯した少年たちの更生に農作物の栽培が利用されている、そのような効果について考察した。
 
 最後に、このつたない研究でも自然回復の本当に小さな一助になることを期待したい。それは人間回復の一助になると信じるからである。

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