神奈川県高等学校教育会館

地域社会におけるIT支援活動の実践的研究



デジタルボランティア実践研究グループ(ぱそぼら)

 
 本研究は社会のIT化の中で生じる情報格差を地域社会において支援する活動を通じて解消するための実践的研究を行なった。今年度は、昨年度の主な支援対象であった地域社会に対する支援の継続も行なうが、新たに障碍(主として知的障碍)をもつ人びとへの支援活動および障碍を持つ子どもたちとの交流活動に力点をおいた。その際、昨年度、不十分であった高校生の参加について、可能な内容と形態を設定し参加の機会を企画した。
 IT化の中で、大企業や官公庁などの大きな組織においては、組織内外にIT化を推進するスタッフを備えていたり、日常的な利用に関しても、周囲に相談できる環境が比較的整っていたりするのに対して、中小企業やNPO、自治会などの地域社会の諸活動において、あるいは高齢者や障碍を持つ人々の生活において、日常的に生じるITに関する問題や疑問に対応する環境が整っていない。そこに本実践のようなボランティア活動へのニーズがあると考えてきた。
 地域社会へのIT支援活動として、沖縄県糸満市米須公民館へのIT支援活動を昨年に継続して5月と7月にのべ4日現地を訪問して実施した。公民館の諸活動、事務処理等におけるIT利用に対する相談や支援を中心に行った。公民館行事のステージに飾る横断幕の印刷をプロッタで行うなど、地域社会においてもITの浸透が進み、リクエストも多様になってきたことを感じた。対応するパソコンボランティアも個人ではなく多様な能力を持つ人を結ぶネットワークで連携して支援することが必要となっていると思われた。
 一方、昨年度は高齢者に対するIT支援活動を試みたが、今年度は障碍をもつ人びとに対する支援のあり方を電子ゲーム(NintendoWii)を利用した余暇活動支援をテーマに、養護学校のイベントへの参加を通じて実践的に研究することにした。養護学校(知的障碍分野)に通う生徒たちは能力には非常に大きな幅があり、すべての子どもたちが電子ゲームを楽しめるわけではないが、予想以上に多くの子どもたちが電子ゲームで遊ぶ経験を持っていることもわかった。12月に藤沢工科高校ボランティア部の生徒4名が瀬谷養護学校の交流フェスティバルに参加し、約50名の養護学校の児童・生徒が電子ゲーム(「太鼓の達人」)を楽しむ場を提供した。発語のない子どもが熱心に遊ぶ姿、リズムをとるのが難しい子どもがゲームに意欲的に取り組もうとする姿、一人がゲームをやっている間、他の子どもたちがまわりでその曲を歌う姿などに出会うなかで、障碍を持った子どもたちの電子ゲームによる余暇活動の可能性があるように実感した。それとともに、これまで「福祉」「交流」と言った活動に関心を持たなかった高校生たちを支援活動や交流に参加をさせるきっかけとなるものであることも実感することができた。
 2年間の実践研究で出会ったさまざまな場から今も本活動への要望が寄せられており、それに応えるべく活動を継続する予定である。

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