神奈川県高等学校教育会館

県立高校における大学生による学習支援活動の試み




高校生学習支援ボランティアグループ



  1. 高校生の基礎学力不足が指摘されて久しいが、とりわけ「課題集中校」においては、中学校時代に学習につまずき、苦手意識を抱えたまま入学してくる生徒が少なくない。しかしながら、そうした生徒に対して、きめ細かな対応をしたくても、現在の学級定員で行われる一斉授業では残念ながら、それは不可能に近い。1クラスを細かく分け、習熟度別に授業を展開することも、生徒の学力保障にとって有効な手法である。一方、放課後などに補習等を行うことによって、授業がわからない生徒、つまずいている生徒の学力の底上げを図ることも可能である。

  2. 横浜北部地区にある県立T高校は、中学における学習成績を見ると、きちんとした基礎学力を身につけていない生徒が多く入学してくるが、一方では「わかりたい」との思いを強く持っている生徒が増える傾向にある。そうした生徒たちにきちんとした学力を身につけさせることを目的として、大学生や大学院生を学習支援ボランティアとして、放課後のいわゆる「補習」をスタートさせている。
    しかしT高校ではあえて、「補習」とか「補講」とは言わず、校名を冠して「Tゼミ」と呼ぶ。2011年度の場合は、数学・英語の2科目だった(前年度は化学を加え3科目)が、6時間目相当時間(行事や短縮授業の場合は時間が繰り上がる)の時間割内に設定され、年間のべ20時間近く実施した。

  3. 1学期の中間試験結果(数学・英語)を参考に、成績の振るわなかった生徒20名前後(いずれも1年生)が「Tゼミ」の受講生に指名される。その生徒たちは3〜4名ずつのグループに分けられ、そこに1名ずつの大学生または大学院生の学習支援ボランティアが配置される。そして、あらかじめ用意されたプリントをもとに学習に取り組ませるのである。担当教科および1学年担当の教員も加わり、マンツーマンによる学習支援活動が進められる。

  4. この学習支援活動には、次の3つの目的を掲げた。
    1. 教職をめざす大学生および卒業生による高校生に対する学習支援に取り組む。
    2. 学習支援に留まらず、これをきっかけに高大連携のさまざまなあり方を研究する。
    3. 高校生に対する学習支援の経験を通じて、教職への意識をより確かなものとする。

    高校生に近い年代の大学生が「先生役」となるので、生徒も学習に取り組みやすいようで、時間内にすべての課題をこなし、教室を後にするときの彼らはとてもいい表情をしている。

  5. 終了後は、ボランティア学生からT高校「ゼミ」担当者に対して、メールによる「ふりかえりレポート」(生徒とのやりとりや取り組み状況等を記入)が毎回、送信されることになっている。このレポートには、個々の観察に止まらず、今後の学習支援の進め方を考えるうえで参考となる意見も含まれており、情報交換にも役立っている。

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