神奈川県高等学校教育会館

教育職員のメンタルヘルスサポートに関する一考察
―1次予防対策に果たす衛生委員会の役割に着目してー



メンタルヘルス研究会

  
 1972年、労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則が制定・施行された。すぐに学校現場に適用されるべきところであったが、文部科学省は、学校保健法(1956年)の適用を理由に、上記の法令の学校への適用を1995年まで見送ってきた。このことが影響して、1979年の調査開始依頼、精神疾患が原因で休職を余儀なくされた教育職員は毎年増え続けている。
 
 一体どこに根本原因があるのか。本研究では、まず、この問題について、1972年(改正2006年)制定の上記の3法令、文科省、厚労省の諸施策、および1996年(改正2006年)制定の「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)に関する指針」および関連する種々の研究論文の検討を行った。その上で、最初に取り組むべき一つの対策として、衛生委員会のメンタルヘルス1次予防対策への活用、衛生委員会活動の組織化・構造化であることを浮き彫りにした。
 本研究は、1次予防対策に果たす衛生委員会の役割に着目し、衛生委員会の業務を組織化・構造化することによって、教育職員のメンタルヘルスサポート体制のあり方を構想することを目的とする。
 
 第1章では、文科省、厚労省の諸施策が教育委員会を通じて末端の学校現場まで浸透しにくい現状や衛生委員会が十分機能してこなかった経緯について文献を通して検討した。
 
第2章では、まず、聴き取り調査を通して、衛生委員会の活動内容はよく知らないが期待感は高く、メンタルヘルスは身近な問題として感じていることが推察された。
 次に、職場環境に関する調査では、産業医科大学が開発したMIRRORをツールとして用い質問紙調査を行った。全体の割合を改善要求が高い順に算出し、現状で既に達成されていると思う事項、改善要求が最も高い事項、できれば改善してほしいと思う事項と3つに分類し、それぞれ割合のトップ10を抽出して考察を行った。改善要求が高い項目としては衛生委員会の活性化への期待が高いことが特徴的であった。
 さらに、スクリーニング調査では、こころの健康度意識調査用紙を用いて、男性、女性、男女総合別、4年制大学進学率(80%以上、50%〜80%未満、80%未満)別、年齢別に、うつ状態と自殺念慮の特徴を明らかにした。
 
第3章では、全体考察として、衛生委員会の業務として、これら3つの調査の1次予防対策としての有効性、P-D-C-Aサイクル・「システム監査」の組織的・継続的・ダイナミックな構造化を試み、メンタルヘルスサポート体制形成のための一つのモデルを提示した。

 また、今後の課題としては、ここで提示されたモデルの実質化に伴う問題、例えば、産業医の権限の行使及び尊重、教育委員会や管理職及び組合代表者の衛生委員会における指導力の向上、衛生管理者の実務能力の向上等である。


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