神奈川県高等学校教育会館

多文化共生教育における高校生の意識の変化についての研究
 〜5日間のフィールドワークで生徒の意識は変わるか?〜 


多文化共生教育研究会
  
  1. 研究の目的
     「多文化共生教育」は、外国につながる子どもたちが生き生きと生きられるように支援するだけでなく、外国につながる子どもたちの周囲にいるマジョリティ側の日本人の子どもたちが変わるための教育である。しかしながら、今学校で取り組まれている「国際理解教育」や「多文化共生教育」は、3F(フード、ファッション、フェスティバル)にとどまるものが多く、日本人生徒の意識の変容までに至っていないのが現状である。
     この研究は、神奈川県内の総合学科高校で取り組まれている、夏休みのフィールドワークを中心とした短期集中講座に参加している生徒の意識の変化を探ることで、「多文化共生教育」はどうあるべきかについて考えることを目的としている。昨年2010年に引き続き、今年も同じテーマで研究し、「生徒の意識の変化」をより深く分析したい。

  2. 講座を受ける前の生徒たちの意識
     多くの日本人高校生は、「なぜ外国人が日本に住んでいるのか」を知らない。漠然と「働きにきている」「勉強しにきている」「日本は住みやすいから」といったイメージしかない生徒が多い。それぞれの外国人固有の移住理由があることを理解できていない。また、
    講座に参加した理由も、「食べ歩きだと思った」「単位がほしかった」「友だちを作りたかった」といった動機で、積極的に在日外国人のことを学びたいという生徒が集まってきていたわけではなかった。

  3. 5日間の講座終了後の生徒の意識の変化
    5日間の講座に参加して、最後のアンケートで、「在日外国人のイメージが変わった」と答えたものが15人中12人いた。また自分自身も変わった、と答えた生徒も多かった。
    受講する前までは、外国人とはあまり関係がない、関わりがないと思っていたが、とても身近な問題であった事に気づく生徒や、外国人が嫌いだったが、その原因が自分の中の差別意識だと気づいていく生徒がいる。さらには、自分にできることは取り組んでいきたい、といった前向きな考えを持つようになった生徒もいた。

  4. まとめと課題
     「多文化共生教育」にきちんと取り組めば生徒たちの意識は確実に変わると思われる。この「まちを歩く食べる知る」の講座は、4校の教員の連携と神奈川県内の在日外国人や外国人問題に取り組んでいるNGOの方々の全面的な協力で成り立っている。いわば恵まれた講座である。今後の課題としては、学校の通常の授業の中で、あるいは「総合的な学習の時間」等の中で、多文化共生教育が日常的に取り組まれる必要がある。そして、生徒の意識の変化に有効なカリキュラム作りが行われる必要があると思う。


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