はじめに

 2003年度から高校で実施される新学習指導要領に基づいた教育課程で学校現場はどう変わるのか?新学習指導要領は、2002年度から完全実施された学校5日制にもからんで、移行措置期間から「学力」低下の批判を浴びている。しかし、「生きる力」を核にした「総合的な学習の時間」の導入は、大学受験に照準をおいた「学力」とは異なった「新しい学力観」として歓迎されている向きもある。
 この他に新学習指導要領では、卒業に必要な総単位数が80単位から74単位へ削減される。必履修科目に2単位科目が設置され、必履修科目も大幅な選択が可能になる。「外国語」が必履修科目となり、新教科「情報」が登場して、「学校設定教科」や「学校設定科目」が各学校が届け出ることによって設置できるようになって、多様な選択科目の中から生徒が自由に科目を選んで学習できるようになる。こうした大きな変更点を含んでいて、学校現場の受けとめ方によっては、高校の教育内容が高校ごとにまるで違ったものになる可能性がある。
 教育研究所では、こうした教育課程の転換期を迎えて、従来の教育課程と新教育課程がどのように変わろうとしているのか事前調査をすることにした。対象は神奈川県立高校の全日制普通科の高校として、2002年4月〜5月の時期に、1999年度入学生の教育課程と2003年度入学生からの新教育課程とを比較するアンケートをお願いした。
 普通科および普通コースのある高校143校にアンケート用紙を配布して、107校から回答をいただくことができた(回収率74.8%)。しかし、この時点でも新教育課程が決まっていない学校もあって、回答をいただけなかったり、回答校の中にも2003年度の教育課程が未定の学校があった。さらに、アンケートすべてに回答が記入されていない学校もあって、各項目の合計数がすべて107校とはなっていない。
 A.総単位数について

 卒業に必要な単位数を尋ねた(図1参照)。1999年度入学生については、文部科学省の基準は80単位であったが、各学校現場では97単位から80単位まで様々である。1校は研究指定校で74単位というところがあったが、105校中30校が80単位で卒業ができるとしている。各高校で定めた卒業単位数を修得できなければ卒業ができないことを考えると、17単位の幅はかなりの違いである。それが、2003年度入学生についてはさらに広がりを見せることになる。
  2003年度入学生について、基準に従って74単位を卒業単位とした学校が105校中28校であった。まだ25校が卒業単位数を決めていないということなので、文部科学省の基準を卒業単位とする学校数が増えたのか減ったのかについては何ともいえない。また、文部科学省の基準は80単位から74単位と6単位分下がったが、その少なくなった分を各学校で削減したかというと、そうはならなかったことがうかがえる(表1)。80校中6単位以上減らした学校は37校で、残り43校のうち現状維持が8校、むしろ増やしたところが8校となった。そして最高96単位から74単位まで卒業単位数の幅が開くことになったということは確かである。
  生徒が3年間で履修できる最大単位数を聞いた(表2)。1999年度入学生の場合は、学校5日制が導入されたものの第2週、第4週が土曜休みという形態である。2003年度入学生の場合は、完全学校5日制が実施されることになる。従って50分授業で月曜から金曜まで6時間として、LHRの1時間を除いて、週29時間=29単位となり、3年間では87単位が履修・修得できることになる。ただし1999年度の場合は、第1週、第3週、第5週の土曜日の授業時間数を何時間とするか、土曜休みの週の授業時間の回復措置を行うか行わないかによって、各学校の週時間数=週単位数が異なってくる。従って3年間の最大履修単位数も異なってくることになる。このことを念頭に置いて考えると分かりやすい。

 1999年度入学生の場合は、87単位の学校が14校と少ない代わりに、週1時間増=3年間3単位増の90単位の学校が27校、週2時間増=3年間6単位増の93単位の学校が14校と多くなっている。最大で100単位修得できる学校もあるが、短期集中講座などで補っていると考えられる。2003年度入学生の場合は、87単位の学校が35校と、約3分の1を占めるようになった。そして90単位の学校が14校、93単位の学校が9校と減っている。ただし、最大114単位から最小78単位まで、卒業までに履修・修得できる単位数の学校ごとの幅は広がっている。1999年度は普通科だが2003年度からはフレキシブルスクールに再編される学校が含まれているため、最大単位数が増えることになった。