特集 : 検証「特色づくり」「新入試制度」
 

新入試制度への期待

島崎 洋子 

 

 この春、受験生が手にしていた募集案内には、新しい入試制度が「生徒の個性、適性、興味などを考えその希望を生かした高校を選択できるようにした」とある。これらの内容は各高校が、それぞれの特色を出し受験生の選択の幅が広がったかのように捉えられた。しかし、実際に受験生を持った親として、従来の選択方法と大差はなかったと思う。この経験から今年度の入試に関し、感じたことを書いてみたい。
 まず、複数志願制。これは、県立高校の中で「すべり止め」が可能となったとも考えられる。殊に成績上位の受験生にとっては、有利なシステムとなってしまったように思う。76%の受験生が同一校を志望したと言われ、複数志願制の主旨が生かされていないとの意見もあるが、受験生が目標としていた学校はあくまでも一校としていたとも考えられる。現に県教育委員会の行った複数志願制についてのアンケート調査の結果(7/21毎日新聞)を見ても、複数志願ではなく一校のみの志願がよいとする理由に「行きたい学校は一つ」と答えた人が全体の1/4いたことからも判る。又、志願に際して私立高校との併願をした受験生が多かった年は他になかったのではないか。中学校の先生方から「新入試制度で全くデ−タ−がありませんので…」と言われ、私立学校の併願を薦められれば、親としてそれを断るだけの自信はこの時期ない。その結果、少子化傾向で経営上、様々な生き残り対策に苦慮している私立学校にとっては、大きな収入源となったことは事実であろう。
 次に、よく判らないのが「選考に当たって重視する内容」だ。各高校、内容的に差は殆どないように思う。もっと独自の観点や重要視するものをはっきりと表して欲しい。
 3番目に「学区」の扱いがある。そもそも「学区」の必要性は何なのか。私の子供の場合は、学区内の僅か5校の中には本人が希望する高校がなく、8%枠のある学区外を受験することになった。各高校がそれぞれの特色を持とうとしているのならば、全ての県立高校を自由選択できるようにすべきだと思う。それに近づけるため、まず現行の8%枠をもっと広げるべきではないだろうか。
 1995年度の高校中退者が全国で約98000人にも達していると報道(2/21日経新聞)され、神奈川県では年間5000人に近いとも聞く。より良い成績の評価を得るために、殆どの中学生が、膨大な量の学習内容を理解、暗記しようと努力し、その一方で部活動、生徒会、委員会活動などにも関わろうとするから、とにかく忙しい。じっくり時間をかければ理解できる学習内容は多いと思うが、それだけの余裕がない生活を子供たちは強いられている。高校中退理由には様々なものがあると思うが、不本意ながら成績の序列により、決められた学校へ進まざるを得なかった生徒も多く含まれていると思う。せめて高校入試後、転校を認める制度が学校間に確立されていれば、中退者を少しでも減らすことができるのではないだろうか。
 100%完璧な入試制度はありえないだろうが、それに近づくための修正は常に必要と思う。来年度の入試選抜の選考ポイントが、先日新聞で公表されたが、その内容は、合否発表までの期間短縮と、普通科専門コ−スの推薦枠の拡大が主なものだった。このような事務的なものばかりでなく、新入試制度が掲げる受験生の個性、適性、興味など点数化できない面を評価する内容になることを期待する。

(しまさき ようこ 保護者 茅ヶ崎市在住)

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