特集 : シンポジウム「入試が変わった!高校はどう変わる?」
 
 特色づくりと推薦制の問題点

石田:二つ質問されましたが、最初の特色づくりですが、私のところのような専門高校、あるいはそれぞれが個性等を持っているところは、恐らくそれでもう問題はないんだろうと思うんですが、要は多くの普通高校がどのような議論をされているかということだろうと思います。残念ながら詳しいことは分かりません。ただ、いろんなところから聞く話では、いわゆる社会的な評価として各学区のトップの方にあるところは、極端な言い方をしてしまえば、先ほど奥山さんも言われましたが、受験も特色だ、と言ってしまえば、これもいいわけです。
 問題なのは、こういう言い方はしたくないですが、中から以下に位置する高校が何とか上にのし上がろう、何か最近はやりの子どもを引き付けるような格好いい言葉を一生懸命考えるということに現実はなるんじゃないでしょうか。
 ただ、それで成功するかどうかは別でして、恐らくそう簡単にはならないでしょう。これはその次の推薦の質問にも重なってくるんですが、推薦は一般の普通科高校は入っていませんけれども、私の学校でも、県教委の方が50%にする用意があるから考えろ、みたいなことが4月に急に出されまして、ほとんど議論をする時間もないままに見直しました。賛成意見は「どうせ工業高校は希望者が少ないから、早く推薦で確保しておかないと、欠員になったら大変だ」なんですよ。おわかりですか、これは推薦でしょうか。推薦というのは違うんでしょう。
 今話があったように、少々成績は悪いかもしれないけれども、工業が好きだから、その点から入学してくる。大歓迎ですね。しかし、そうではないということです。推薦がどういうところに利用されているのか。推薦を大いに利用しようとするのは、どちらかと言うと、今言ったように評判が余りよくないから、早目に確保したい。こういうことで推薦を利用されることが明らかじゃないでしょうか。恐らく各学区の上位校では推薦なんてどうでもいいんじゃないか。それなりの生徒が集まってきてくれるわけですから、そういうところに私は推薦の問題性があるんじゃないか、という感じが致します。
 もちろん推薦という、いわゆる学力検査をしないでとりますから、さまざまな要素を取り入れながら、その学校の特徴をつかんでいくことは、その学校の先生方、あるいは中学校との連携だとか、いろんなことを工夫しながら、それなりに意味のあるものをつくり出すことができるかもしれません。できるだけ近隣の中学と連携して、地域の子どもたちを優先してとっていくとか、地域の教育を育てるということの観点から、実施する方法は残されていると思いますが、必ずしもそうではないだろうと思います。 やはり子どもたちにしても、親にしても、できるだけ評判のいい、社会的な評価がいい学校に子どもを入れたいだろうと思いますから、そういう入試の力学が働いている限りにおいては、選抜がある限りずっと続いていくでしょう。そういう中で推薦だったら、学力検査をしなくて済むんですから、「もしかしたらおまえ入れるよ」ということでもって、推薦の場合はまたさらにもう一回チャンスがありますから、だめでもともとみたいな形で実施している。そういう利用の仕方もあるでしょうし、それはあくまで入試というからくりの中でもって、親も子どもも中学校の先生方も、あれこれ苦心してそれに対応するのが現実だと思います。その辺の考え方を全部解消したところで、純粋に推薦というものを活用して、例えば学校間格差をなくしていこうとかいうように働いていくならば、それはそれなりに意味があるだろうと私は思いますので、全面的に反対だと言っているわけではないんです。現実はどういうふうに動いているのかということを考えれば、なかなか難しいだろうということを言っているわけです。もしも普通科高校全部に推薦制なんていうことになれば、大変なことになるんじゃないでしょうか。
 それから先ほど言い忘れたことで、一つだけ指摘をしておきますが、新入試制度が始まった初年度、昨年ですが、昨年1年間の高校中退者が史上最大になりました。先程言ったように、県教委の指導部長が、行きたい学校を選んで行った結果、欠員が生じたとおっしゃっていたわけですけれども、行きたい学校に行ったら、中途退学者が一番多かったという話になることについても、やはり気にとめておく必要があるんではなかろうかと思います。以上です。

黒沢:どうもありがとうございました。ところで会場の皆さんも、司会者が余計な質問をするなとさっきからじりじりしていられるという方もいらっしゃると思いますが、もう少し我慢して下さい。
 今の石田先生は工業高校ですので、そういうご自分の体験を踏まえての発言だったと思います。例えば推薦の問題にしましても、先程の特色づくりにしても、高校の種類によって異なると思いますし、また学校の所在地によっても結構違うのではないでしょうか。それから言葉は余りよくないかもしれませんけれども、ランクの高い高校、つまり、進学校とか、あるいは「底辺校」と言いますか、そういう学校ではまた事情が違うのだと思います。会場の中にそういう先生がいらっしゃいましたら、討論の中でぜひ補足をして頂ければありがたいと思います。これは中学校の場合も同じで、学校を取り巻く環境によって状況は違うだろうと思います。そうした点を考えて頂いてご発言下されば幸いです。いかがでしょうか。

 本当に行きたい学校に行けるのか

石橋(氷取沢高校):総務室の奥山さんでも、高校教育課の鈴木さんでも結構なんですけれども、新入試は県民の理解を得られているという形で、さっきアンケートの結果でおっしゃったんですけれども、県の教育行政、つまり、公教育の教育行政を進められている方に対して、こういう観点で質問してみたいんです。
 それはどういうことかと言うと、公教育というのは19世紀の終わりにできましたが、その公教育が始まったときに、一つは義務教育、それから世俗化、つまり、宗教と切り離すこと。もう一つは無償教育という観点があったと思うんです。教育の無償、つまり、お金がかからない。今度の入試改革は、いろんな意味でいいところも悪いところもあるんですけれども、結果的に塾・予備校に頼った。あるいはお金がかかるような方向にいったと思うんですよ。そういう意味では、いわゆる義務教育の中学に行っている保護者に経済的な負担を強いたという観点では、若干これは問題じゃないかと思うんですけれども、この点に関してお答えを頂ければと。先程県民の理解を得られたという観点で、アンケートでお答えを頂いたんですけれども、義務教育というのはお金がかからないような方向の教育じゃないかと思うんですけれども、いかがなもんですか。

早川(向の岡工業高校):社会科の教員をしております。
 奥山さんにまず質問なんですけれども、現在の高校制度、多様化を進めようということで、個性の問題をも、つまり、多様化をするということは、中学卒業時点でみずからの個性というものを的確につかんでいる、そういう前提に立たなければなりませんよね。それでないと県教委はそういう多様化を進められないと思うんですが、そのようにお考えになっている。つまり、現在の教育制度の中で、自らの個性を自らがきちんと中学卒業時点でつかんでいる、というふうに考えてよろしいのかどうか、端的に答えて頂きたいと思います。
 第2点目、失敗を恐れないというふうにおっしゃいました。つまり、今度の入試制度というのは、失敗を恐れないと、つまり、失敗をさせるということでもありますよね。複数志願制というのは、入学できる枠は変わっていないわけですから、複数志願になるということは、倍落ちることにつながりますよね。入試制度を複数化すればするほど、例えば推薦制、1次希望、2次希望というように増やしていけばいくほど、落ちる回数のみが増えていく。結局入る数は変わらないですから、こういうことになりますよね。
 つまり、失敗を恐れないために、失敗をさせる制度をつくりたいと考えていると思うんです。簡単に考えればですよ。これはいやみで言っているのではなくて、私は本当にそう考えているんです。失敗の経験をさせる、そういう入試制度なんだというふうにしか、私は受け止められないです。そのように考えて、根本的な部分でそうではないんだったら、そうではないと答えていただきたい。
 そしてもう一つは、失敗を恐れないような子どもたちをつくるのに、なぜ入試を使わなきゃならないのか。入試制度を使わなきゃならないのか。私は根本の部分だと思うんです。なぜなのか。そこをぜひ答えていただきたい。
 先ほど石田さんがおっしゃったことに少し補足します。私も工業高校に勤めていて、本校で今年の生徒にアンケートを取りました。近隣の工業高校、本校を含めて4校及び課題集中校と呼ばれている学校4校で、子どもたちにさまざまな形でとったんですけれども、ここが一番入りたかった学校なのかどうなのかと、第1問はそういう質問をしたんです。そうしましたら、本校では一般入試で入ってきた子たちの内、17%しか本校を希望しなかったのです。
 問題は推薦の方なんですけれども、生徒からすれば、その学校に入りたかった生徒が来ているはずなんです。そうですね。制度的に考えればですよ。ここはちょっと質問なんですけれども、その推薦の目的というのを後で答えて頂きたいですが、現実に本校においては、26%、4人に1人、推薦で入った生徒ですよ、合格した生徒の中で4人に1人しか実際に本校に入りたかったというふうに答えていないんです。26.87%、そして同じく26%は他の工業高校に本当は行きたかった。そして25%の生徒が、他の普通科高校に行きたかったと答えている。
 普通科の課題集中校を考えれば、15%が自分の学校に行きたかった。55.89%の生徒は他の普通科高校に行きたかったと答えているんです。これは普通科の4校の合計263名のアンケートの集約結果です。工業高校は483名の集約結果で、自分の学校に入りたかった生徒は24.64%、他の工業高校に行きたかったのが16.36%、他の普通科に行きたかったのが33.7%という結果です。
 この結果から、推薦も含めて現在の入試制度というものが、本当に行きたい学校に行けるということになっているのかどうか、もう一度お答えを頂きたい。胸を張ってそのように答えられるのかどうか。

黒沢:どうもありがとうございました。第1の質問は、私もしたことですけれども、ほかに、今、高校の先生がかなり専門的に話をしていたんですが、どうぞ。

稲森(神奈川県教育を守る会):まず鈴木さんにお伺い致します。今回の入選の是非は、アンケートでおおむね良好と言われたが、そのアンケートをとった生徒34校の何年生でございましょうか。1年生だったら私は信ですから、おおむね良好とみんな言うと思います。
 そのことと、それからアンケートについて、私は聞かれていません。入選が変わるときはもっと公募しましたよね。それと同じように、変わって実施された後に、もっと県民に広く、この入選はどうだったかということを問うたのか。私が知らなかっただけなのかもしれませんが、その点をお答えて頂きたいと思います。
 それから奥山さんにお伺い致します。お話はとてもよく分かって、中学校を卒業したときは進路が明確ではない。だから、今回の大師高校みたいな高校があると、1年間自分の中で学んでから移れる。とってもいいと思います。そういう高校を教委としてもっと増やしてくれなくちゃ、大師高校1校だけじゃ何にもならないと思うので、その辺のことで、将来のあり方に関してもっと強く進めていくのか。それに絡んだ統廃合なら私は理解します。ただ、一方で、すっぱ抜いた「神奈川新聞」を私は支援したいと思います。すっぱ抜いたからこそ、そういう話が出るんでございましょうから、火のないところには煙が立たないと思っておりますので、そういうふうに思います。
 それから石田先生に関しては、私、とても特徴のある学校にいらして、気持ちもよく分かります。ただ、もっともっと高校の先生方はどう思いますか。入選が変わる前に、なぜもっとみんな騒がなかったんだろうかなと。それに関してお仲間に対する気持ちをお伺いしたいと思います。

諸星(不入斗中学):中学校の現場にいまして、今2年生なんですが、非常に子どもがいらいらしたり、落ち着きがなかったり、忙しい生活を送っています。というのも、現在制度の改革を進めても、入試というものがある限り、そういった問題が起きてきていると思います。
 鈴木さんに質問なんですが、全入の論議は、こういういろんな改革案が出てくる中でなぜ出てこないんでしょうか。それから普通科推薦の問題については、石田先生が指摘されましたが、オフレコの部分で何か考えがないのかどうか。あるとすればどういう問題や課題があるのか。中学生と接していまして、やっぱり子どもはゆったり勉強して、部活、勉強に充実感を持って過ごしたいし、やっぱりみんなで地域の高校に行きたいと思っている。「入試がなくなったらいいだろう」と言うと、みんなが「そうだよ、先生」というのが子どもや親の本音だと思います。

黒沢:どうもありがとうございました。あとどなたか。

 

 モチベーションアップをどうはかるか

高尾(中萬学院・エドペック):私は塾の立場で、高校全入そのものは大賛成なんですけれども、ちょっと視点として欠落しているのかなという感じがするので、その部分を載せたいと思います。一つは、公立高校の話が中心になっていますけれども、選択する側からすると、今、公立と、先ほど中学校の先生からお話が出ていましたけれども、私学との併願の問題が出ていました。そういう関係で、例えば公立はどういう位置づけになるのか。あるいは公立と私立とどういうふうに考えていくのかという話が、全く出ていないなというのが一つ感じた点です。
 それからもう一つは、高校に進学するときは目的志向を持っていくんだ、選びとれるんだというプログラムが用意されれば、本当にいいことだと思いますし、そうなることが大変望ましいと思うんです。逆に、じゃ中学生が本当に選びとれるかどうかという議論がさっきから幾つか出ています。そのときに、モチベーションをどうやって上げるかという問題についての具体的なシステムのプランがいつも欠落しているように思うんです。ここはあくまでも高課研の話から進んで高校のカテゴリーとして考えているから、そこは切り離されているのかもしれないんですけれども、ちょっとこの問題は解決しないんではないか。中学生のモチベーションアップ、それは小学生からつながってくるかもしれません。そういった部分の具体的プランについてはどうなってくるのか。この辺の話がつながらないといけないだろうと思います。
 それからもう一つは地域差の問題ですね。先ほど鈴木さんからお話がありました、同一志願率の問題に関して数字が出ていました。あれはおしなべて見るとそうですけれども、例えば秦野・伊勢原学区なんかを見ると、明らかに中学校側での操作がなされていて、進路指導上、明らかに同一で出しなさいという指導をしていると思わざるを得ない。事実一部そういう声が中学校の先生から言われているという声をたくさん耳にするわけですけれども、そういった問題についてはどうなのかということ。
 個々の運用の問題について言い出すといろいろいあると思いますが、そういった話が少し欠けているのかなと思ったので、指摘をさせていただきました。

黒沢:どうもありがとうございました。塾の方からで、非常にユニークな質問だったと思います。

鈴木真人(富岡高校):入試制度ということからは少し外れた話になるかもれしませんけれども、大どころにおいて関係があると思うので、特にどなたかということではなく、ご質問したいと思います。 
 私の趣旨は、生徒のことを中心に事が考えられているかということです。今までのことを考えますと、例えば行政サイドの方からいろんな形の話によりますと、例えば高等学校における単位認定や、進級・卒業の弾力化、それから個性を尊重して、多様化した生徒に多様に対応しなさいということ。あるいは今回の入試制度についても、「行ける学校から行きたい学校へ」ということは言ってみれば、そういう理念的な部分においては結構説得力があるんです。そういう面で行政側の対応というものは、先行していた部分があったと思います。それに対して学校現場の実態はどうかと言いますと、先ほどの単位認定や、卒業や進級の弾力化ということについても、実は私たちは余り以前とは変わってはいない物差しを持って対応しています。
 それから個性尊重ということにつきましても、実は行政サイドでそれを進めるんでしょうが、実態としましては、私はかつての新設100校計画における個性化教育の失敗というものを経験しています。さらには「ふれあい教育」ということを言われていますけれども、それがどれだけ実態化したかどうかについても私は疑問を持っています。
 それで今回の入試制度を見たときに、今言ってみれば、高校現場は、この制度を不合理な制度だということを指摘します。指摘はするけれども、制度が既に始まってしまっている中で、私達に問われているのは、44%の総合的選考の枠にどう対応するかということだと思うんです。その部分において私達の現場における対応が、例えば特色づくりについても、極端に言えば、形だけつくって実態はないんじゃないか、そうも思います。結局行政サイドは、形だけの改革というものを常に考えてきているんじゃないでしょうか。
 一方で教育現場というものは、面従腹背と申しますか、まあ適当になあなあでやっていこうという格好で、実は非常に旧態依然の学校現場があるんじゃないか。そんな中で制度というものが、かなり悲鳴を上げているのが現状だと思うんです。そういうような観点から、どなたでも結構ですけれども、お話をいただきたいと思っています。

黒沢:ありがとうございました。高校の先生、中学校の先生、それから塾の方、保護者と言いますか、地域の方からご質問が出ております。具体的な事実関係についてのご質問と、ややご意見を踏まえた意味の質問や意見も出ておりますが、まだ何かありましたら、どうぞ。

広瀬(県教文研):たくさん質問が出ているので、一つだけ簡単に質問をさせて頂きたいと思います。コーディネーターの黒沢さんの方から、一番最初に質問があったと思いますが、いわゆる入試の多様化を進めていけば、かどうかということです。これは非常に重要な論点だと思っています。それに対して鈴木さんは、アンケートにそういう項目がない、あるいは特色ある生徒が入ってきて、学校が活性化したみたいなことをおっしゃいました。ここで聞きたいことは、学校が活性化したかどうかではなくて、格差の是正が行われる、あるいは行われる可能性があるかどうかということです。
 新しい入試制度を導入するに際して、かつて神奈川県の教育委員会のある幹部が、こんなふうなことを述べています。つまり、入試の多様化を進めていくと、高校は学力で入った生徒と、それ以外の方法で入った生徒がミックスされる。これは長い目で見ると、格差是正の方向に向いていくのではないかということです。この発言は「神奈川新聞」の94年7月22日に出ています。そこで鈴木さん、奥山さん、お二人にお聞きしたいのですが、こうした発言のように、今後多様な入試や総合的選考などが行われていくと、学校間の格差が是正されるとお考えになるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。

黒沢:どうもありがとうございました。とりあえずこの辺で一応区切って、ご指名された方には答えて頂き、また他の方もご意見があったら答えていくという形をとらせていただきますので、よろしくお願い致します。

鈴木彰:塾と予備校の件ということで、今、石橋さんの方から質問がありましたが、実際にこの制度を導入したことによって、塾へ通う生徒が増えているとか、そういった情報は私どもの方にはないんです。 また、先程言われてしまったんですけれども、一応今回この場ではアンケート結果を中心にしゃべっていますから、そのことについてお答えさせて頂きますと、今年のアンケート項目の中に、受験する高校の決め方についてという項目がございまして、これは昨年もあったんですけれども、自分で決めたというのが69.6%、昨年が55.2%です。それから主として中学校の先生の意見をもとにしたというのが12.1%、昨年は16.5%ですから、若干落ちているということですね。それからこれが答えになるかどうかわからないんですけれども、主として塾の先生の意見をもとにしたというのが2.9%です。昨年が3.5%ですから、明らかにそういった意味では、塾の先生に聞かないで自分の決めていることがこのアンケートでは出てきています。あと保護者など家族の意見をもとにしたが10.8%、昨年が17.8%です。その他として4.2%、昨年6.4%、無回答が0.4%で、昨年が0.6%ということで、この結果を見ますと、昨年に比べて自分で決めたという方が非常に増えているということでございます。それに引きかえ、塾の先生の意見をもとにしているというのが一番低くて、しかも、それが若干ポイントを下げている状況でございます。

黒沢:済みません。ちょっと飛びますけれども、そのアンケートの内容について稲森さんの方から出たんですが、関連しますので、最初にお答えいただければと思います。

鈴木彰:これは昨年も今年も5月に実施しまして、7月頃に記者発表させて頂いているものなんですけれども、34校、普通科18学区につきまして均等に、それに専門学科、総合学科ですね、こういったものを含めてやっています。
 当然1年生を対象にしておりまして、今ご質問があったのは合格者だろうということなんですけれども、不合格者を特定してアンケートをとるのは今のところ不可能です。逆に「不合格」になっている方にアンケートをとることはできます。それはどういうことかと言いますと、私学併願の方ですね。つまり、公立を落ちて私学に行っている方についてアンケートをとれば結果が出るわけです。そうすると、これでかなりの信憑性が出てくるということで、私共は昨年から9年度、10年度の選抜につきましての検討の中で、私学協会に申し入れております。やらせて頂きたいと2年越しでお願いしていますが、残念ながらこの件については、まかりならぬということになっておりますので、そういう意味では大変申しわけないんですけれども、要するに、合格者だけのアンケートになっているのでございます。
 

 失敗を認めトライできるシステムの実現

黒沢:少し順序を逆にしまして失礼しました。高校の教員の早川さんの方から、かなり原理的な問題等が4点出ています。第1点は私が質問したこととも関連するかと思いますが、これは奥山さんに対する質問が主だったと思いますが。

奥山:向の岡工業高校の先生からご質問をいただいた件について、簡潔にお答え致します。
 まず第1点、中学卒業時点で自らの個性をきちんとつかんでいるとするのか。これは黒沢先生の先程のご質問と同様で、私が聞いた協議会の委員さんの意見の中でも、9割はまず曖昧模糊としているのではないかということでございます。これは多分誰が見ても中学3年の時点では、例えば「私は将来弁護士になる」、あるいは「将来証券マンになる」とはっきり言う人はなかなかいないんじゃないかと思います。ただ、どういう方向に進むかの大枠が大体見つかっているならば、そこで例えば専門学科という形もありますし、先程るる説明させて頂きました、総合学科という道もあるだろうと考えています。
 それから次の失敗を恐れないという問題ですが、これはお答えする前に、どうしてこういう教育の話が出たのか、先程は少ない時間で説明を漏らしている部分がございます。私の資料の3ページをごらんになって頂きたいのですが、こういう教育理念に立って、一体どういう具体的な対応が求められるのか。例えば3ページの(2)の柔軟なシステムの実現、この中で申し上げますと、ロの転編入学の弾力化、こういったところで見えてくるのではないか。今まで一つの高校に入ると、いやがおうでもあの先生と3年間お付き合いをするんだと。ところが転編入学の弾力化がますます広がっていけば、自分の意思でもう一度やり直しますというふうな、言ってみれば、失敗を認めトライできるような形になろうかと思います。あるいは中途退学につきましては、総合高校で中途退学の募集枠が確かあったと思います。こういう新たな取り組みがどんどん増えてくれば、一回こっきりじゃなくなるんじゃないかと思っております。
 ただ、先ほどの推薦入試、1次募集、再募集と受験し落ちて、ますます失敗を生むという話ですが、これは見解の相違で、私と致しましては、選択の回数が増えた分それだけ本人にとってはプラスになっている部分もあると思います。物事を暗く見ると、そういうふうになるんじゃないかと思います。(笑) 次に、入試制度をどうしても使わなきゃいけないのか。これにつきましては、実は昨日、今日と、先ほど石田先生からもお話がありました、作文を入試に取り入れるという話もあります。これはこれから先のことですから、県教委がどうするとはなかなか言えないと思いますので、個人的な見解にとどめさせて頂きたいんですけれども、よく新聞に登場されます文部省生涯学習振興課長の寺脇研さんは「昔、生徒がたくさんいて、それで学校が足りなかったときには選抜をやらざるを得なかった状況だった。少子化でもって、今、学校が子どもの数に比べて多くなってきた場合には、逆になるんじゃないか」というお話をされていたと思うんです。私は試練という意味では、ここで選抜というのは残した方がいいんじゃないか。それは決して学力じゃなく、例えばお見合いと同じで、推薦という形でもって面談して、君はこの学校に本当に合っているかどうか、お互いに目で見ながら、話し合いながら、その中で培っていくのがいいんじゃないかと思っています。そういう場面が必要だと思うんですが、将来、今のような形の入試は、私は変わってくるのではないかと思っています。
 それからもう1点、進路が明確でない子どもに対して、例として総合学科の大師高校を少し報告させて頂いたんですが、これをふやしてほしいとのご意見。正にこのお話は大変ありがたくて、4ページ目をごらんになっていただきたいんですが、答申の概要の中に出ています。(3)特色を生かした適正配置、その中でイの総合学科への再編整備としまして、「既設の普通科高校や専門高校を統廃合して、発展的統合や改編により通学可能な範囲に設置し、なお、将来には各学区に設置することを期待する。」経済的に大変だと思ってはいますが、時間をかけていきたいと思っております。

鈴木彰:全入の件でございますけれども、入試とあるところでは連動していますが、この会でそういったことについての私ども見解は、今回ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

黒沢:ご出演をお願いしたときに、答えられない問題も出てくるだろうということで、私が最初に申しましたように、今後の課題として当然それは出てくると思います。先ほど奥山さんの方からは、個人的な見解ということで、試験の廃止とは違うけれども、一定程度のそういうことは可能じゃないかという答えがございました。そういうことでちょっとご勘弁を願いたいということでございます。

稲森:全国的に。

黒沢:そうですね、では、これも。

鈴木彰:普通科の推薦につきましては、オフレコでもいいからということですけれども、実際、高課研の報告の中では、普通科の一般コースの推薦入学の導入については、今後の社会情勢の動向等も見極めながら、なお検討することが必要である。こううたわれているわけです。
 それを受けまして、改正大綱の中で、改正大綱はユニークなつくりになっておりまして、本文は左側に改正大綱の条項が出ているんです。その右側に解説がついているんです。この点は非常にユニークで、その解説の部分で、なお、専門コース以外の普通科については今後の課題とし、引き続き検討していくということで、この部分で先送りになっている。
 今後の課題ということで今やっているわけですけれども、ただ、条件としまして、全国を見ますと、首都圏の中では神奈川県だけが普通科に推薦を導入していないという状況でございます。それが我々の課題ということでございますから、そういった他県の状況等は常に調査検討しているということでございます。
 

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