特集 : シンポジウム「減るの?変わるの?どうなるの?」
 
「学校間格差」の意識や「職場民主化」の問題

梅本:再編計画の対象になっている職場が、それをどう評価し、参画していこうとしているか、とういうことにつきましていは、寛政も平安も、基本的には“やろう”というところで一致し、10月だったと思いますが、寛政も平安も設立委員会をそれぞれに設けて、これまでに4、5回ぐらいは、校長、県教委のスタッフを含めた打ち合わせを重ねてきていると思います。
 実際問題、県の方はまだ正式なタイムテーブルを発表していませんので、いつまでにこちらが何をしなければいけないとか、いつまでにこちらが校内で議論して決めておかなければならないのかとか、取り組みにくい状況があることは事実です。多分早いところその辺をきちっとしてほしいというのが、平安にしても、寛政にしても、新校設立委員会の要望だと捉えています。
 評価ということなんですが、この「ニュースレターNEZASU」にも書いておきましたが、平安の職員を私は代弁できませんので、寛政サイドでいえば、全日制普通科は持て余してきたという現実がございます。ここ何年か、組合の課題集中校対策会議等にも参加し、その方たちと一緒に、いわゆる課題集中校が今後どういうふうにその課題を解決していったらいいのかということはいろいろ議論を重ねていく中で、寛政高校も一定の方向は議論してきたということがあります。 総合学科導入ということについては、大師高校が総合学科を導入する(1996年から)ことについていろいろ賛否両論ありました。大師高校について我々は一定の理解が出来ると考えてきました。課題集中校会議でも寛政高校でも、それを総合学科導入という形ではなく、全日制普通科であるけれど、実は総合学科に近づく形になっていくのかな、という議論がありまして、したがって総合学科を導入すっることに対しては特別抵抗はない、むしろそれについてこれまでも関係各位の努力で、100時間ぐらいの非常勤加配や、専任加配でも4人、5人といただいてきましたから、こちらが学校を主体的に作っていけるようにお金の面でサポートしてくれるんだったら、もう、喜んで、という感じは私だけではなくてほかの教員にもあるだろうと思います。皆さんおとなしいので、喜怒哀楽が顔に現れないのでよく分かりませんが、多分そうだろうな、と思っています。
 寛政高校の特殊性もあると思いますが、特に総合学科導入、平安高校とのジョイント、ということにはそんなに抵抗はない、ただ、移行期の2年間については、寛政サイドで入学してきた生徒と、平安サイドで入学してきた生徒が入り口別々で、入ってみたら………、男女混浴というのは嬉しいんですが、そうではなくて、問題にすること自体ばかばかしい程度の、薄くスライスされたレベル差があるんです。寛政サイドでは「こんな私でよかったら」という感じなんですけれど、平安サイトにしてみると、「平安の生徒でも困っている、そこに寛政が来たら端にならない」という反応があるのではないか、非常にうがった見方をして申し訳ないと思いますが、ひょっとして、職員にはそういう意識があり、また、生徒の方は、「俺たちは平安に入ったんだ。寛政に入ったんじゃない」という意識を超えられるのかな、という、その辺の心配が会って、移行期についてどうしていこうか、というところが、今この段階では、2005年度以降総合学科をどう作るかというところよりも、大きなテーマになってしまっている状況です。
 2005年度以降の総合学科のどういう青写真を作っていくかは、これから、平安・寛政の職員が雁首揃えていろいろ考えていくと思うんですkれども、私自身が見ていて、職場の民主化が本当に再編計画についていけるの?という感じが正直言ってあります。
 職場が非常に民主化していて、みんなの意見で、みんなが作っていこうとなっていて、平安高校の設立委員会も、寛政高校の設立委員会も、勝手に動くなよ、という手かせ・足かせを嵌められている、必ずそれぞれの職場の意見をきちっとまとめて、しかも、校長や教頭の意見は抑えて、県教育の意見も抑えて、という言い方でその役割を与えられたわけですが、果たしてそれが出来るのかな、という疑問があります。
 私自身ここずっといくつかの学校を経験して感じてきていることですが、本当に自分たちの学校を作るんだという意欲が、この再編計画にどういうふうに結集してくるのか、というところはとても大きな問題かなと考えています。
 いろんな問題があります。例えば、寛政高校のお茶のみコーナーでは「セラピーの一つとしてカラオケルームなんて作るといいね」とか、「必ず専属のケースワーカーはつけてほしいね」とか、「教育相談専門にきちっとやってくれるカウンセラーは複数ほしいね」という話が雑談の中で出てくるわけですが、そういうものに対する財政的な保障が得られるかどうか分かりません。県との交渉の中でこれから話を進めていって、一定の妥協点を追及していくことになるんだと思いますが、そういう青写真が我々教員サイドから、いわゆるリーズナブルなものとして提示できるかどうか、私は個人的に今の寛政という職場を見て、そこが一番のポイントかなと考えております。

司会:どうもありがとうございます。今回の計画は、今までの学校は両方が条例上は廃校になって、新しい学校が設立されるという形でできてくると思います。百校計画のときは、新しい学校はまったく初めてのところから作ってきたという経験が神奈川にはあります。これはノウハウがあると思います。
 今回の場合は、両方の学校を引き摺りながら、両方の職員が新しい学校を作るという、これにはさまざまな問題があると、ということで、梅本さんからお話があって、これからに向けての課題などを話していただきました。
 次に田奈高校は今回対象になりませんでしたが、後期には必ず対象になると私は思っています。そういったことへの準備とか、こういう学校になればいいかな、という思いがあればそれも含めて、本間さんからお話いただければ、と思います。

 

現場での改革の実践からはなれた再編計画

本間:前期計画ですらどうなるかわからないところで、先のことはわかりません。後期計画のことまで、私には考えようがないというところです。
 再編計画については、いろいろ報道されており、組合の資料も配られているので、ある程度はお分かりだと思うんですが、もし参考になればということでお配りした、『ねざす』第24号の6ページの終わりから10ページにかけて載せておきましたので、これからの議論の参考にしていただければと思います。
 先ほど申しましたように今回の再編計画が、このまま一部の該当校だけに矮小化され、そこだけに限られて進んでいってしまい、再編該当校でなかったところは、「ああ、該当しなかったので、まあ、とりあえず」ということで済んでいくものではないだろうと思います。
 その辺はきちんと考えていかなければいけない、と思っており、今二つの再編該当校から、いろいろな問題を抱えながら取り組んでいるお話をいただいたわけですが、最初のところで、特に驚くことはなかったということもありました。
 今回の再編計画は、現場からの積み重ねの上で出てきたものではもちろんなく、それとは切り離された形で、突然出てきたことは否定できないと思います。例えば、再編計画の中で県が示してきた文書には、改編の狙いであるとか、どんな生徒を想定しているか、まで書いてある。現場との話し合いも一切なく、現場に一言も諮ることなく、想定される生徒まで書いてくるものだろうか。
 その想定される生徒像は、ただ書いただけ、というかもしれませんが、今いる生徒にさまざま取り組みをしている学校に対して、「これからはこういう生徒を想定して学校づくりをやっていくんだよ」というのは、この再編計画の中で私としてはどうしても許せないところ、という印象を持っています。
 これから先、現場がどういう学校を作っていくか、と取り組んでいくわけですが、現場からの修正を県教委としてどこまで認めるのか、どれだけの支援をしていくのか、それが大きな問題になるだろうと思っています。
 さらに出来上がっていく学校の入試選抜について、通学区域まで、最初からわざわざ決めています。各学校の現在の実績を踏まえた上で新しい学校を考えるならば、当然その学区の中に位置づけないければいけないはずなのに、最初から、全県学区と決めてしまっている、そういうところに、今回の再編計画の大きな問題を感じています。
 この辺がどうなっていくかというところで、後期計画もまた見えてくるのではないか、と思っています。

司会:どうもありがとうございます。今、県立高校を中心に再編が進められている神奈川の具体的な状況等の話がありました。先ほどお話しましたように、フロアからのあらかじめお願いしておきました。それをお聞きした上で、皆さんと議論を進めていきたいと思います。
 横浜市ですでに再編計画が発表され、具体化に向けた議論が進められています。浜高教(横浜市立高等学校教職員組合)の副委員長である河野さんに来ていただいております。よろしくお願いいたします。

 

横浜私立高校の状況――「いい加減な」市教委

河野:横浜市立の高校の事情は、お手元のパンフレットで、大方のところはお分かりになると思います。二点について、市立高校の問題を話したいと思います。
 一点は、全日制普通科が5校あるんですが、その5校を一気に全て単位制にするという横浜市教委からの提案です。二点目は、1,500任を越える生徒が学ぶ定時制5校、全国的に見てもかなり規模は大きいんですが、この5校を廃校にして、140人定員の昼間定時制1校を作るという提案がなされています。
 この市立高校の再編整備について一言でいうと、「市教委は非常にいい加減だ」というところを理解していただきたく、お話してみたいと思います。
 単位制へ、という問題です。単位制の評価・総括、あるいは課題の整理を市教委はまったくやっておりません。この間のやり取りの中で、最後にどういう発言が市教委からあったかというと、「学年進行でもいい、ホームルーム活動は今のままでいいから、とにかく単位制という名前で学校を作ってくれ」とまで言っているわけです。そういう中で、単位制を指向しようと手を挙げた学校は5校中1校もないというのが現状です。
 それから、5校ある定時制を140人定員の昼間定時制に、という問題ですが、市教委はもう数合わせなんですね。2005年に15歳人口がボトムを迎えるが、そのときの数を計算すると、私学と全日制の課程を考えるならば、横浜市立の定時制は140人で足りるんだ、ということを言うのです。この間、計画進学率が引き上げられたり、定時制に入学する生徒は若干増えているという現状をどう理解するのか、と問うたところ、市教委は「今一番の問題は私学かが計画通り採っていないからだ。私学が計画どおり採れば、すべて問題は解消する。2005年には、140人でいいんだ」という論法になるんです。
 私学が決して計画通り採れる状況にないというのは、市教連や県高教組の資料や分析でもはっきりしているわけで、ここ数年、定時制を希望する生徒は増えると私たちは考えています。そればかりでなく、私学を含めて、けんないには5,000人近い高校中退者がいるわけですが、その問題はどうなんだと市教委に問うたところ、何も答えられません。新しいタイプの学校が増えれば、中退者は減る、という程度の発言しかできない、情けない状況にあるのが市教委の状況で、そういう中から出てきた再編計画であることを理解していただきたいと思います。
 県の改革推進計画はこれほど情けない話ではないと思うんですが、市立高校の教員としてなかなか見えないところがありますので、その問題を問いかけてみたいと思うんです。県内の高校教育が抱える問題はたくさんあると思うんですが、フレキシブルスクール、単位制高校、総合学科高校がそうした問題とどういうふうに繋がってくるのか、その先にどういう展望が開かれるのか、というところが私には見えてこないんです。
 親や県民・市民にはもっと見えてこないんじゃないか。親がどういう理解をするかというと、「生徒が減れば、学校がなくなってもしょうがない、先生が少なくなってもしょうがない」、短絡的かなと思うんだけれど、どうしてもそういうところに行ってしまう、と思います。ですから今、高校教育が抱える課題と、新しいタイプの学校とその先に見える展望を、どう県立高校の先生方が理解されて、この改革に取り組まれようとしているのか、お話願えればと思っております。
 一つ問いたいのは、市の再編整備の県の改革推進計画も、これによって、子どもたちが抱える苦しみや苦悩が解決されるんだろうか、あるいは、親が抱いている教育に対する不安がなくなるのだろうか、そういうことをやはり意識しないわけにはいかない気がします。
 最後に、高校1年と中学2年の娘を持っている親として発言させていただくならば、娘はいい子なんですが、世間で言う出来の悪い子ですから、苦しい状況があるんです。こういう状況に置かれた親としては、今回の改革では問題は何ら解決しないんじゃないか、受験期の娘を持つ親としての不安は解消しないんじゃないか、という思いがあることを述べて、発言を終わります。

司会:どうもありがとうございました。県立・市立が変わっていく中で、私学からは、どう見ておられるのか、私教連(神奈川県私学教職員連合)副委員長の山口さんにお話いただきたいと思います。
 

私学の状況と高校再編

山口:神奈川私教連の山口と申します。昨年は、県に向けての「30人学級実現と私学助成拡充」の直接請求に、ご協力をいただきまして、ありがとうございました。
 残念ながら、今年の私学助成は10%削減となってしまいました。このことと今回の公立高校の再編問題とを、私学としては、一つのものとして見ているところからお話いたします。
 県立高校将来構想検討協議会が開始された半年遅れか1年遅れですが、神奈川県は私学助成検討協議会も開いています。その結果、私立学校への助成金の制度を変えていくことも発表しています。私どもの運動の反映と思っていますが、今まで、県のつかみ金を単価方式で助成金算定していたものを、1年間の公立高校の標準的運営費を分母にその2分の1を目指して何%かを私立学校に助成する方式に変えました。
 二つの検討協議会が検討を進めている間、1997年7月、県民のニーズ調査があって、教育内容は私学、県立を選ぶのは学費、という結果が示されています。私は、「公立高校に特色を」ということのためにやったんではないか、と見ています。私学の学費が高い、と宣伝しようとしたわけですが、確かに神奈川の私学は全国で平均が一番高いです。
 ですが、その背景には、私学への助成金が全国で最下位、国基準を下回っている事実があります。7月に文部省と交渉した時に、「遺憾だ」とまで言う状況です。さすがに9月の県議会で、与党議員が、全国最低といわれるのは困ると県当局に質問して、少しいい答えが返ってきたようですが。
 先ほど浜高教の河野さんからも話がありましたが、この助成金・高学費構造が、私立学校が、教育内容だけでは生徒を確保できない状況を生んでいます。10月でしたか、「県立高校が定員削減」と報道されましたが、その分私学へ行くかといえば、それは絶対ありえないのです。県教委と私学の校長協会が公立・市立高校設置者会議を持っていますが、ここで、急増期に百校計画でまかない切れなかった高校生を私学が受け入れることとの取組みみたいなものだと思いますが、私立学校への定員枠というのを設定しました。
 92年では2万人が私学の枠だったんですが、生徒減でどんどん下がってきて、97年には1万8千人枠、今年もそうだったんですが、来年は1万8千5百人枠になります。では、1万8千人来ているのかというと、97年から99年まで、中学の卒業生数は平衡状態を保っていても公立校も定員枠を変えていなかったんですが、私学は97年が17,198人だったのが、今年の新入生は15,544名、つまり枠は確保されていても、2,456名来ていないのです。
 私学の教員は公立の中学校へこの時期ご挨拶にうかがいます。公立中学の先生方は「もう、私学は経済的に選択肢に入っていないんですよ」と言われます。
 それはそうです。初年度の納付金で公立と私学は7倍の格差があります。先日組合の関係で金沢工業団地に行きましたが、その中小工場の皆さんは「私学なんてとんでもない、うちは1ヵ月先倒産するかしないかの状況だ」というところがいくつもあるんですね。
 公立高校の学費減免制度を使われる生徒さんの数が増えていると聞きます。そのような中で、今度の公立統廃合と私学助成の問題の関係があるように思います。先程来、先生方は各校で具体的な検討を始めているとおっしゃられましたが、生徒さんからの実態からどういう学校にするかということを考えたとき、当然財政のことも考えなければいけないと思うんです。
 そこの部分を見ないと、学校としての独自の教育課程は組みきれず、県が構えた中で、となるんではないか。それが心配です。また、今度の再編計画の中で、公立の専任の先生の数がどうなるのかも、私学は注目しています。お金が公立の方にかかれば、今の財政状況の中で県が私学にも保障していくとはどうしても思えません。
 そう考えたときに、本当に生徒の実態に見合った、子どもたちの要求からの学校づくりが出来るんだろうか。 つまり、公立の問題だけじゃなくて私学も含めた県の教育行政、教育財政の問題じゃないかと、私学が今見ているということです。

司会:どうもありがとうございました。今まで県立・横浜・私学と、高校だけの話で、そういうふうに見ているんだろうか、ということで、神教祖(神奈川県教職員組合)・湘北教組の高倉さんに中学校の教員の立場でお話いただきます。
 

中学から――希望者全入制を

高倉:ただいまご紹介いただきました高倉です。県立高校改革推進計画案を見て、また各地域ごとの中学校進路指導担当者説明会へ参加した上で、危惧する支店から意見を述べたいと思います。
 まず、統廃合に伴う通学区域の弾力的運用については、隣接学区への通学問題では評価できるんですが、結果として、多学区への進学、いわゆる有名進学校への集中という学校間格差の問題が解消されないこと。それからもう一点、説明会の中で出て来るんですが、普通科推薦制の導入に至っては、成績による高得点順での合否判定という的確主義の解決は依然として進まないという状況。
 このような入選制の改革が、改革、改革といわれながら、基本として改革になりえていないのではないか。私が教えている生徒の中には、極端な言い方をしますが、「馬鹿だから学校に行けないんだ、高校には行けない」というあきらめで、自分の成績が足りないことを自覚して、自暴自棄な中学校生活を送ってしまう子が未だに出ています。
 園子たちに、「競争原理じゃないんだよ。皆が共に生きていく世の中だよ」と言ったって、現実に高校の壁があれば、「俺はやっぱり行けないんじゃないか。成績が悪いから行けないんじゃないか」という言葉が出てくるというのは、我々として矛盾を感じています。「15の春を泣かさない」といおう進路指導については、輪切りが悪者にされて入選制度が改革されてきています。しかし、基本として入学試験イコール知識重視が変わっていない現実があり、総合高校や総合学科という魅力ある高校づくりを打ち出しているものの、ボトムからは公立高校は入りにくい、入りにくくさせています。
 この部分は、我々として捉えてかなければいけないし、また、高校の先生方にも絶対考えていただかなければいけない問題だと思います。
 そういう中で、今度の小中学校、高校の指導要領には、教育改革が大きくうたわれており、総合的な学習の時間とか、選択の時間が総時数の3分の1導入されてくるわけです。その中に、「生きる力を伸ばす」という目標が掲げられていますが、基礎・基本を大切にするという従来の学力保障も残されたままになっています。
 新しい学力観などに目を奪われがちですけれども、この基礎基本ということに入試の壁が当たってくると、どういうふうになっていくのか。また、この基礎基本の学力保障をしていくのは、現在よく言われるように、塾ではないか、という進学塾の問題。問題というより、子どもが通わなければならないという現実。これは逆に言うと、経済的に不安定な子には進路が保障されないという問題。そういう抜本的・根本的なところに触れずして改革はありえないのではないか、と思います。
 「ニュースレターNEZASU」に書かれている、「学習意欲が欠如し、無気力・無目的な日常を送りつつ、時に問題行動を起こす生徒たちに、この機会を最大限に活用し、新しい教育環境を設定・提供することにより学校再生をはかることも可能ではないか。いや断固そうすべきではないだろうか」というところを読みまして、我々が、学校間格差を解消し、生きる力を育てるには、この成績による適格者主義を取り払い、高校希望者全入制をより推進していただければ、と考えます。

司会:ありがとうございました。最後にすでに高校を卒業した子ども、現在高校生の子ども、これから高校に入れようという子どもをお持ちの、母親である小室さんにご発言いただきます。
 

親と教師の話し合いを

小室:1973年から14年間に高校が百校作られたということをいま知ったんです。ちょうどその年、8年前に中沢高校を卒業した娘が生まれたので、百校計画はなんとなく分かっていたんです。どうして百校も作っちゃったのか、と思ったんです。それは、確かに子どもの数が増えたから作ったんでしょうけど。26年経っていますよね。人間、先のことは分からないんですが、私たちが今しなければならないことは、これからの子どもたちに、何かいいものを残していくかでしょう?
 不平・不満ばかりを言っていてもしょうがないから、現実をとりあえずこのまま受け止めて、これからどうしようか、自分の問題として考えたんです。
 「神奈川新聞」に載ったとき、娘が、「中沢高校がなくなっちゃうんだよ」なんて感じで、ショックで、いろいろ話をしたんです。私も三崎高校を卒業したので、親子で、統合される側の、なくなる高校を出たことになります。娘は突然聞いたばかりだから、びっくりしちゃっているんです。8年間、同窓会も行ったことがないのに、今年は何か感じたものがあるみたいで、2歳の子どもを連れて文化祭に行ったんです。私は何年か前に偶然用事があって三崎高校へ行って、そこにいた高校生たちに、「おばさん、卒業して27年も経つんだよ」といって話したのを思い出しました。
 自分なりにいろいろ考えて、基本的には、教育とは家庭の問題だと思うんです。家庭の中で、親子関係・夫婦関係がうまくいっていないことで、高校に行っても中学に行っても、問題を起こしたりします。今まで4人の子どもを育ててきて、夫婦喧嘩したら子どもの具合が悪くなり、病気がちだったりしました。
 お父さんとお母さんが仲良くなかったら、子どもは駄目なんです。たとえ18歳の高校生の子どもでも、夫婦がうまくいっていないときは学校で問題を起こしています。ですから先生方はあまり悩まないでください。親がもっとそういうことを考えるべきなんです。日常茶飯事、忙しく暮らしていますから、4人子どもがいたら、4人いっぺんにではなく順番に問題が起きるんです。2人同時進行でも、どっちかに重心が行っちゃって、もう1人がおろそかになると、そこが問題、という感じです。
 長男が野球をやっていて、野球の強い学校に入学したものですから、いじめられて帰ってくるんです。兄弟でも、ぱしりとか、いじめがあるんです。野球で、ピッチャーでがんばってきたもので、その反動が家に帰って出る、私も仕事で忙しくていないから、今の中学2年の子が幼稚園ぐらいの頃から、野球の大変さをぶつけていて、次男も同じように、お兄ちゃんのストレスに巻き込まれていたんですが、それも今になって分かるんです。その時は分からなかったんです。親たちが、もっと先生方と話し合う機会を作らない限り、先生方ばかり悩んでいても……、もう、そんなに悩まないで下さい。
 仕事が忙しいなんていって、お父さんも逃げていないでください。子どもが問題を起こすことによって、お父さんも参加しますよね、学校に行きますよね、うちもそうでした。
 先ほどのは先生方の中だけの問題みたいで、親には全然分からないので、もっと世間の人に訴えるようにしてください。親ももっとかかわるべきです。
 問題を起こすような子どもに、私は感謝したいと思います。そういうふうに子どもが問題を起こすことによって、いろんなことを考えさせてもらいますから。そういうことも世の中のお父さんやお母さんに訴えたいんです。これまで私も長いこと具合が悪くてそれが出来なかったんですが、中学2年の息子がいますから、中学校の先生方にも、親たちにも、ここで学んだことは伝えていきたいと思います。

司会:どうもありがとうございます、再編校以外の学校のためにもお話いただいたんんじゃないか、と思います。百校もなんで作ったのか、県教委に代わってお答えしますが、百校作っても、神奈川県の進学率は全国の中でよくはなかったのです。真ん中よりまだ下というぐらいに生徒が増え、当時の中学生の親たちの、これだけ生徒が増えているんだから、学校を作れという高校増設運動があり、私たちも百校では足りないということで運動した結果だと思います。
 もちろん将来的には減るということは承知しながらも、その時代に生まれた子どもだけが割を食うのはおかしい、という考えに立ったんだと思いますし、私は、確信を持って、百校は間違いではなかった、と考えております。
 今、それぞれの立場からお話をいただきました。すでに対象になっている学校の中で進められている動きの中で、該当校以外の方から、問題があるのではないか、という厳しい批判もいただきました。
 残りの学校の方、また相手校の職員も来ております。そんなはずじゃないよ、とか、そんなつもりで学校作るつもりはないよ、とか、いろいろなご意見があると思います。また、該当校でない学校の方々も、県の職員以外の方々も見えておりますし、高校生も来ております。さまざまな立場の方で、今までお話のあった部分についてシンポジストにご質問もあるかと思います。
 また、自分の学校ではこうなんだ、あるいは、こういった学校に入りたいんだ、ということを含めて、限られた時間ですが、お話を進めていきたいと思っております。
 ご発言をなさる方は、記録の関係上、所属とお名前を言っていただきたいと思います。

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