特集 : シンポジウム「17歳〜高校生の生活実態と学校」
 
 将来と学校から切れた「自尊感情」(2)

 どういうことかと言うと、“階層”という言葉を使っていますが、階層が高いほど勉強時間の減り方は少なくて、階層が低いほど、より勉強しなくなっているということです。
 つまり、今起きている“勉強離れ”、“学びからの逃走”とか、佐藤学氏は言っていますが、そうした現象がどの子にも同じように起きているわけではなくて、家庭的な背景と結びついて起きているということがこれらの結果から分かります。
 その背景には、意欲とか、興味・関心といったものについての変化があります。
 そういったものを見たのが、同じく、右側に3つ並んでおります棒グラフです。ここでは、母親の学歴というものを取りまして、母親の学歴ごとにこういった質問への回答率を、やはり、79年と97年で比較してみました。
 例えばグラフ3の、「落第しない程度の成績をとっていればいいと思う」という回答ですが、まず黒いほうのグラフ、97年のほうが、どの親の学歴で見ても大体多くなっているんです。つまり、79年に比べれば、そこそこの成績でいいよ、と思う生徒が確かに全体として多くなっている。しかし、その増え方が親の学歴によってこれだけ違うわけです。
 79年の時点では、親の学歴による差はほとんどないとみなしていいくらいの差ですが、97年の黒いほうを見ますと、明らかにグラフをつないでみると、傾きが急になっておりまして、これは、学歴によって意欲の差が拡大してきていることを表しています。
 同じような質問ですが、グラフ4「先生や親の期待にこたえるために勉強しなければならないとと思う」という回答ですが、これは、勉強しなければ、という方向で聞いていますから、黒いグラフのほうが押しなべて皆低い数値を表しています。つまり、全体としては、意欲が低下しています。しかも、ここでも同じように、白いグラフに比べて黒いグラフのほうが、親の学歴による差が拡大しています。
 それからグラフ5、「授業がきっかけとなって、さらに詳しいことを知りたくなることがある」というものですが、これにつきましても、黒いほう、つまり最近のほうが、みんな数値が落ちております。つまり、授業がきっかけでもっと詳しいことを知りたくなる、“自ら学び”という、教育改革で言われるところの、“自ら学び、自ら考える”ということを現すような項目だと思うんですが、この20年間を見ていきますと、子どもたちの意欲は高校2年生の段階では、はるかに減退し、しかもこのように、親の学歴との相関を強めているわけです。
 もちろん高校2年に至るまでに何があったのか、多分先ほどお二人の先生がお話くださったような、いろいろな背景が背後にはあるんだと思います。そこで、今日私がお話したいのは、もちろん一人ひとりの子どもにとってみれば、そういったことが誰に起きるかということについて、確率的なことを論議しても仕方がないのかもしれませんが、一旦引いてみて、マクロな視点から見たときには、ここには明らかに社会の階層化と言われる現象が現れているということです。
 おそらく20年前だって、社会の階層によって、子どもたちの有利・不利の違いがあったんだと思います。しかし、それが現在こういう差の拡大として現れてきているということを、われわれが教育の問題を考える場合に、見ておかなければいけないと思います。
 次に、もう一枚、一ページ目ですが、このデータをご紹介したいと思います。この辺が、先ほどのお話と若干変わってくるところだと思いますが、これは、私のほうでは「自己有能感」というふうに呼んでいますけれども、“他者と比べて”ということが入っていますから、単に自分自身の自尊感情というところからすれば、ごく一部を示しているに過ぎないといえるかもしれませんが、「自分には人より優れているところがあるかどうか」という質問を、79年と97年の2回にわたってきいてみました。

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