特集 : 「総合的な学習の時間」が迫ってくる
 
未来をひらく総合学習

梅原利夫・西本勝美
ふきのとう書房
1800円+税

 副題に、「『総合的な学習の時間』へのもう一つのアプローチ」とある。これには、「従来の教科や領域の枠内でおこなわれてきた総合的な要素をもつ実践に注目し、その『総合性』をさらに発展させた『総合学習』を、『総合的な学習の時間』に持ち込もう」(はじめに)との意味が込められている。2年がかりで刊行にこぎつけた集団的労作。
 本書の企画・編集作業を進める過程で、「『総合学習』とは、『地球的・人類的課題』の担い手に成りゆく21世紀の子どもたちの『普通教育』として構想されるべき学習であり、従来の教科や領域とは相対的に独立した目標と教育課程上の位置づけを与えることが可能な学習」ではないかとの考えに到達したという。(綿引) 
 

教科を基礎にした米<食と農>からはじめる総合的学習−消費者の視点から−

鶴田敦子・高木 直
福留美奈子・金綱敦子
かもがわ出版
2095円+税

 3章からなる本書の中核をなすのはU章の「米からはじめる総合的学習の実践」であろう。「家庭科での食生活の学習は、生活者・消費者として『食べること』から農産物の生産・供給という『農業』の世界までつなぐ総合学習として発展する」との考え方から、米(食と農)に関する小・中・高・大学における授業実践(11本中6本が高校での実践)を集め、それぞれに検討を加えている。
 高校の実践では、バケツでイネを栽培させる実践や食料輸入をめぐるディベート授業などもある。「家庭科教育は、『生活者の視点からの総合学習』」と、「家庭科の中で総合的な学習を最大限追求」することを提唱している。(綿引)
 

総合的学習の時間に生かす これが平和学習だ!!

日教組平和学習冊子編集委員会(編)
アドバンテージサーバー
2000円+税

 今まであまり系統立てて平和学習を実践したことのない教職員にも、大いに参考になる本である。これまでの平和教育の到達点や今後の課題などが整理され、実践例も豊富。実践例の他にも、発行時点の情況についての解説が丁寧である。また、参考問い合わせ先などの情報も充実している。総合的学習の中心テーマが何であろうと、自分たちのおかれている現代の社会については考えざるをえない。そして情勢は刻々と変化し、問題は次から次へと出てくる。もちろん、本書に取り上げられた問題だけではなく、新たに直面する課題に対しても、資料収集・課題整理・生徒の学習支援という、学習の組み立てに応用できる内容である。(武田)
 

ふつうの公立学校で「総合的な学習の時間」をどう創るか

今泉博・岩辺泰吏
菊地良輔
民衆社
750円+税

 約100ページ、手軽に読めるハンドブック。書名の頭に「ふつうの公立学校で」とある。「Vいま、何から始めるか」「Yこれまでに『総合』的な学習はどう行なわれてきたか」などの目次を一見すればわかるように、読者の疑問や関心にできるだけ応えようとの視点で書かれている。
 Vの「新指導要領を読みこもう」では、「新指導要領は矛盾だらけ、(略)『すきま』だらけ」だが、「改革の可能性にも満ちている」と指摘。続く「『総合的な学習の時間』の読み方」では、指導要領の「総則」の文言を示し、「子どもと拓く学びの世界」を切り拓くにはどうすればよいか展開する。文部省の保護者向けPR冊子を「越権」と批判する。(綿引)
 

総合的な学習の実践

人間教育研究協議会(編)
金子書房
1950円+税

 「総合的な学習の時間」に関する実践報告中心の本である。小中高にわたる5つの「実践構想」報告、ペルーでの算数の授業についての体験報告等、一つひとつは興味深いものである。
ただ、こうした報告がもつ問題点は、解説部分を書いた京都大学の梶田氏も指摘している。「ごく一部の学校の突出した事例からイメージを創っていくのではなく、『普通の』条件を持つ『普通の』学校でも実践が可能な現実的プランとして、今後の具体化が図られていくことを期待したいものである」。興味深い実践事例がどこまで広がりを持つことができるか、これは教育に関わる実践報告のほとんどが抱える問題である。(本間) 
 

総合学習の理論・実践・評価

高浦勝義
黎明書房
2600円+税

 著者の高浦氏は現在、国立教育研究所教育指導部長という役職に就いている。書名どおりに、「総合的な学習」について、その理論から、実践・評価にいたるまで、概論的に説明しようとする、丁寧な書き方になっている。
 ただやや酷な言い方をすれば、全体にわたり「教科書的」にすぎ、とくに具体性が必要な「実践・評価」についても、「理論」と同じ様な記述方法から離れていないのが気になる。しかし「総合的な学習の時間」が誕生するに至った経緯、その理論的背景について概論的に学ぼうとする場合には、適当な本であろう。とくに新学習指導要領との関係で、「総合的な学習の時間」にどのような意味が与えられ、どのような期待がかけられているかを知ろうとするときには役に立つ本と言える。(本間)
 

海外の「総合的学習」の実践に学ぶ

柴田義松(編)
明治図書
1860円+税

 この書は「総合的学習の開拓」シリーズの中にある1冊である。まず序章において我が国の総合学習論の系譜や戦後日本の教師たちが取り組んだ「総合的学習」を紹介し、諸外国の特長にもふれながら「総合的学習とは何か」を述べている。そして5つの国の実践例から授業のあり方や特長を紹介する。
 1.カナダの総合学習−教科の統合から総合学習へ 2.アメリカ−実践理論3.ロシア−人間・生活・経済4.ドイツ−総合的学習の現状5.英国−教師からはじまるカリキュラム改革の時代、となっている。5つの国の実践からは「学習」に取り組む上での視点や発想の転換をもたらせてくれるのではないかと思う。(小山)
 

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