第13回 シンポジウムのはじめに
                      本 間 正 吾

 フリーターと言う言葉が使われ始めてほぼ十年がたった。 いまこの国には何人のフリーターがいるのだろうか。 200万とも400万とも言う。 正確な数を求めてもそれほどの意味があるとは思えない。 定義の仕方によっていくらでも変わっていくからである。 数などわからなくとも、 身の回りにフリーターと呼ばれる若者がいて、 しかもこの社会を支える重要な働き手となっていることは、 だれもが知っている。 さらに最近はニートという新しい言葉も登場した。
 そして今度は対策が云々される。 個人の意識や親の教育が問われ、 さらに学校に対応が求められる。 それでことは解決しないだろう。 フリーターの増加もニートの登場も、 不況から派生した一時的な現象でもないだろう。 ましてやその責めを個人や家庭の甘さ、 学校教育の遅れから来る 「失敗」 ととらえてすむような現象とも思えない。 おそらくこの社会の構造、 文化の構造の大きな変化に目を向けてはじめて彼らの存在は理解できるのではないだろうか。 言い換えるならば、 フリーターを考えることをとおして、 今の社会がかかえている大きな問題にふれることができるのではないか。 こんなもくろみを持って 「「フリーター」 に何を見るか」 というタイトルを掲げさせてもらった。
 このシンポジウムでは、 学校と職業の接続の問題について研究を重ねてきた小杉礼子さん (労働政策研究・研修機構研究員)、 田正規さん (ベネッセ教育総研所長)、 さらに現場で進路指導にかかわってきた高校教員の小島喜與徳さんにお話をいただいた。 また、 長年にわたり定時制高校の教員をつとめ、 その経験をふまえた研究、 執筆活動を続けてきた佐々木賢さん (研究所共同研究員) に、 コーディネータをお願いした。 シンポジウムでは、 期待したとおり多くのデータや情報の提供、 様々な視点からのお話をいただくことができた。 だが肝心の討議にあてる十分な時間が確保できなかった。 そのため 「何を見るか」 という主題に十分に入ることができないまま時間が来てしまった観がある。 せっかくご来場いただいた方には、 この点で失望させてしまったのではないかと思う。 問題の大きさからすれば当然予想のつくところでもあり、 企画をたてる段階での配慮が必要だったと反省せざるを得ない。
 ここに収録したシンポジウムの記録では、 紙幅の都合からシンポジストの話のかなりの部分を割愛し、 さらにその関連で書き換えたところがあることをご承知おきいただきたい。 ただ使用したグラフ、 図表についてはほぼ収録してある。 また、 「シンポジウムを終えて」 というタイトルでコーディネータの佐々木さんに文章を寄せていただいた。 シンポジウムでの討議不足を補うものとして参考にしていただきたい。 なお、 フロアーの発言者の氏名、 学校名等は載せないかたちにしたこともご了承頂きたい。
   
(ほんま しょうご 特別研究員)