編 集 後 記

◆事情があって、 この夏はあまり外出することができなかった。 時間が空くと借りてきたビデオを見たり、 本を読んだ。 高校教育会館の夏季講座でお話しいただいた中西新太郎さんが紹介された高校生向きの本を読んでみた。 「永遠のフローズンチョコレート」 という本である。 (ファミ通文庫) 中西さんが紹介された本は、 他に 「ガガガ文庫」 とか、 「電撃文庫」 とか、 これまでなじみがない本ばかりだった。
 内容はどう見てもさわやかなものではない。 9 人も人を殺し続ける高校生とその恋人が主人公だ。 その一人がこう言う。 「ほんとのところはさ、 あたしたち、 それほど普通じゃないんだよ」 9 人も殺しているんだから、 そりゃあ普通じゃないだろうと思いながら読み進むと、 「普通ってなんだよ」 と片割れが言う。
 なんだか異物を飲み込んだような感じがして、 ぶつぶつ言っていたらツレが 『普通をだれも教えてくれない』 という本を差し出した。 こちらは倫理の教科書でお世話になった鷲田清一さんの本である。 鷲田さんは 「普通」 を 「生きていく上で本当の拠りどころとなりうる単純なこと」 「生活の定点」 と表現している。 私は、 学生時代に、 とにかく人と違うこと、 「普通」 でないことをめざしていたような気がするが、 今の高校生は 「普通」 とは何かがとても気になるようだ。 40年前反抗の対象だった 「普通」 は今や、 なんだかよくわからない存在になっているのだろうか。 考えてみれば鷲田さんの言う 「普通」 というのは要するに 「道徳」 のことではないか。
 今回特集した 「道徳教育・シチズンシップ教育」 はなかなか奥が深くて、 興味深い論考が揃っている。 「道徳」 と聞くと 「戦闘態勢」 にはいるか、 冷笑する人が多いような気がする。 どちらでもなく、 じっくり読んでいただければ幸いである。 ご意見があれば、 是非お寄せいただきたい。  
◆ 「パリ20区、 僕たちのクラス」 はこの夏、 たくさんの人から見るように薦められた映画である。 戸田さんの文章にあるように、 見た方が自分に引きつけてみることができる映画だからだろう。 ジャックアンドベティに来たら見たいものである。
◆個人情報保護や情報公開の問題は、 日々高校現場が悩んでいる問題である。 「クラス通信の行方」 はそうした問題を書いていただいた。
 毎日、 クラス通信を出し続けている教員は、 今でも少なくないように思う。 毎朝早朝に起きてパソコンに向かい、 学校へ行って印刷室に駆け込み、 そしてホームルームで配る、 そうした日々を送る方もいよう。 そんな実践によって、 ギリギリのところで支えられている学校もあるのではないだろうか。
◆海外の教育情報が、 今号から装いを新たにして連載していただけることになった。 佐々木賢さんの文章を楽しみにしていた方も多いと思う。
◆千葉の鳥塚さんの文章は転載である。 「貧困と格差」 は、 今後も重要なテーマになると思われたので、 転載させていただいた。 鳥塚さんにお礼申し上げたい。 (永田裕之)



教育研究所員名簿
研究所員 石臥 薫子(テレビディレクター・ライター)
井上 恭宏(神奈川県立横浜修悠館高等学校教諭)
大島 真夫(東京大学社会科学研究所研究員)
沖塩 有希子(青山学院大学講師)
金沢 信之(神奈川県立田奈高等学校教諭)
佐藤  香(東京大学社会科学研究所准教授)
宗田 千絵(神奈川県立市ヶ尾高等学校教諭)
武田 麻佐子(神奈川県立瀬谷高等学校教諭)
手島  純(神奈川県立大和西高等学校教諭)
藤原  晃(神奈川県立茅ヶ崎高等学校教諭)
本間 正吾(神奈川県立有馬高等学校教諭)
山崎 隆恵(神奈川県立綾瀬西高等学校養護教諭)
特別研究員 永田 裕之(元神奈川県立高等学校教諭)
事 務 局 員 布施 俊子(神奈川県高等学校教育会館 県民図書室司書)
共同研究員 神田  修(九州大学名誉教授)
黒沢 惟昭(長野大学社会福祉学部教授・元教育研究所代表)
小山 文雄(作家・近代史家・元教育研究所代表)
杉山  宏(元神奈川県立横浜日野高等学校校長・元教育研究所代表)
佐々木  賢(社会臨床学会運営委員・前教育研究所代表)
(2010年 4 月 1 日現在)


ねざす No46 2010年10月29日発行

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