編 集 後 記
■ 「再編」 についての特集は二度目になる。 正直言って苦戦している。 この10年を鳥瞰できるような図が描けていない。 44号、 45号に掲載された論考と、 じっくり取り組みながら考えていきたいと思っている。

■職業教育にさまざまな視点から注目が集まっている。 本田由紀さんの 『職業教育の教育的意義』 (中公新書) をはじめ、 職業教育の必要性を説いた論考が多い。 雑誌 『世界』 (2008年10月) が掲載した共同提言 「若者が生きられる社会のために」 は、 職業教育訓練の大幅な拡充を謳っている。 一方、 神奈川県は100校計画で99校の普通科をつくった。 これほど普通科重視の増設計画を実施した自治体はめずらしい。 この点に関して現場からも異論は出なかったし、 むしろ歓迎されたといってよい。 今、 職業教育をどうすべきなのか、 どうできるのか、 考えることは多いように思う。 小特集はそんなことを頭に浮かべながら企画した。 今後、 学校での実践記録をできれば掲載したい。

■今回、 千葉の山田晴子さんから、 障害のある子の高校入学について寄稿をして頂いた。 『ねざす』 は、 10号から 4 回にわたって 「『障害』 者と高校教育」 というテーマで共同研究を行っている。 それから20年が経つ。 当時考えてもいなかった、 養護学校 (特別支援学校) との人事交流が行われ、 多くの高校教員が障害のある子の教育に携わることになった。 一方、 高等学校に養護学校 (特別支援学校) の分教室ができ、 増え続けている。 山田さんの寄稿をきっかけにあらためてこの問題について考えてみたい。

■今、 何が 「真っ当」 であるか、 よく分からなくなっていないだろうか。 「教育この 1 年」 を作成するために新聞を切り抜いているが、 メディアを見ていると特にそう思う。 冬季オリンピックで服装を非難された 「国母選手問題」 は当初非難一色かと思ったら、 すぐにまるで補うように国母選手をめぐる美談が紹介されたり、 弁護論が紹介された。 ネットでのやりとりも百家争鳴である。 興味深い文章が載ったかと思うと削除されたりしている。 見ていると両論のやりとりはなく、 双方言いっぱなしの観がある。 これほど価値観が多様化している中で 「道徳教育」 を行うのは大変だと正直思った。 成田さんの文章は、 実は以前いただいていたものだが、 今回掲載させて頂いた。

■多少仲間褒めになるかも知れないが、 「『新編 新しい歴史教科書』 を読む」 と 「教育現場の非正規雇用」 は力作だと思う。 じっくりお読み頂ければ幸いである。

■今回から 「学校から・学校へ」 の連載を始めた。 第一回は教員の方に書いて頂いたが、 次号は教員以外の方に書いて頂くつもりである。 大風呂敷を広げるようだが、 学校や教育をめぐる 「公共的な空間」 をめざしたい。

■佐々木代表が 3 月で退任された。 5 年にわたり、 研究所をリードしていただいた。 深く感謝したい。

(永田裕之)

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